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ミチフミ龍之介

ミチフミ龍之介

季節が流れる、城寨が見える  ♯ 13

#ランボー詩集 #中原中也訳

4. ジュギュルタ王(3)

 当時羅馬はジュギュルタが事に、
 介入せんとは企てゐたり、我は
 迫りくるそが縄目をば見逃さざりき。立つて羅馬を討たんとは決意せり
 かくて我日夜悶々、辛酸の極を甞(な)めたり!
 おお我が民よ! 我が戦士! わが聖なる下々の者よ!
 羅馬、かの至大の女王、世界の誇り、
 かの土(ど)は、やがてぞ我が手に瓦解しゆかん。
 おお如何に、我等羅馬のかの傭兵、ニュミイド人(びと)等を嗤(わら)ひしことぞ!
 この蛮民等はジュギュルタが、あらゆる隙に乗ぜんとせり
 当時世に、彼等に手向ふものとてなかりし!……

 彼はアラビヤの山多き地方に生れた、彼は健やかに
 軟風(そよかぜ)の云ふを開けば、((これはこれはジュギュルタが孫!……))

つづく…。
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ミチフミ龍之介

ミチフミ龍之介

季節が流れる、城寨が見える  ♯ 56

#ランボー詩集 #中原中也訳


ミシェルとクリスチイヌ

 馬鹿な、太陽が軌道を外れるなんて!
 失せろ、洪水! 路々の影を見ろ。
 柳の中や名誉の古庭の中だぞ、
 雷雨が先づ大きい雨滴をぶつけるのは。
 おゝ、百の仔羊よ、牧歌の中の金髪兵士達よ、  
 水路橋よ、痩衰へた灌木林よ、  
 失せろ! 平野も沙漠も牧野も地平線も
 雷雨の真ツ赤な化粧(おめかし)だ!

 黒犬よ、マントにくるまつた褐色の牧師よ、
 目覚ましい稲妻の時を逃れよ。
 ブロンドの畜群よ、影と硫黄が漂ふ時には、
 ひそかな私室に引籠るがよい。

 だがあゝ神様! 私の精神は翔んでゆきます
 赤く凍つた空を追うて、
 レールと長いソローニュの上を
 飛び駆ける空の雲の、その真下を。
 見よ、千の狼、千の蛮民を
 まんざらでもなささうに、
 信仰風な雷雨の午後は
 漂流民の見られるだらう古代欧羅巴に伴れてゆく!

 さてその後刻(あと)には月明の晩! 曠野の限りを、
 赤らむだ額を夜空の下に、戦士達
 蒼ざめた馬を徐(しづ)かに進める!
 小石はこの泰然たる隊の足下で音立てる。

 ──さて黄色い森を明るい谷間を、
 碧い眼の嫁を、赤い額の男を、それよゴールの国を、
 さては可愛いい足の踰越(すぎこし)祭の白い仔羊を、
 ミシェルとクリスチイヌを、キリストを、牧歌の極限を私は想ふ!
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