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ミチフミ龍之介
#ランボー詩集 #中原中也訳
4. ジュギュルタ王(3)
当時羅馬はジュギュルタが事に、
介入せんとは企てゐたり、我は
迫りくるそが縄目をば見逃さざりき。立つて羅馬を討たんとは決意せり
かくて我日夜悶々、辛酸の極を甞(な)めたり!
おお我が民よ! 我が戦士! わが聖なる下々の者よ!
羅馬、かの至大の女王、世界の誇り、
かの土(ど)は、やがてぞ我が手に瓦解しゆかん。
おお如何に、我等羅馬のかの傭兵、ニュミイド人(びと)等を嗤(わら)ひしことぞ!
この蛮民等はジュギュルタが、あらゆる隙に乗ぜんとせり
当時世に、彼等に手向ふものとてなかりし!……
彼はアラビヤの山多き地方に生れた、彼は健やかに
軟風(そよかぜ)の云ふを開けば、((これはこれはジュギュルタが孫!……))
つづく…。


ミチフミ龍之介
#ランボー詩集 #中原中也訳
ミシェルとクリスチイヌ
馬鹿な、太陽が軌道を外れるなんて!
失せろ、洪水! 路々の影を見ろ。
柳の中や名誉の古庭の中だぞ、
雷雨が先づ大きい雨滴をぶつけるのは。
おゝ、百の仔羊よ、牧歌の中の金髪兵士達よ、
水路橋よ、痩衰へた灌木林よ、
失せろ! 平野も沙漠も牧野も地平線も
雷雨の真ツ赤な化粧(おめかし)だ!
黒犬よ、マントにくるまつた褐色の牧師よ、
目覚ましい稲妻の時を逃れよ。
ブロンドの畜群よ、影と硫黄が漂ふ時には、
ひそかな私室に引籠るがよい。
だがあゝ神様! 私の精神は翔んでゆきます
赤く凍つた空を追うて、
レールと長いソローニュの上を
飛び駆ける空の雲の、その真下を。
見よ、千の狼、千の蛮民を
まんざらでもなささうに、
信仰風な雷雨の午後は
漂流民の見られるだらう古代欧羅巴に伴れてゆく!
さてその後刻(あと)には月明の晩! 曠野の限りを、
赤らむだ額を夜空の下に、戦士達
蒼ざめた馬を徐(しづ)かに進める!
小石はこの泰然たる隊の足下で音立てる。
──さて黄色い森を明るい谷間を、
碧い眼の嫁を、赤い額の男を、それよゴールの国を、
さては可愛いい足の踰越(すぎこし)祭の白い仔羊を、
ミシェルとクリスチイヌを、キリストを、牧歌の極限を私は想ふ!

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