バツイチ。離婚はとても一般的なライフイベントになった。特に統計を取ったわけではないが、40代以降のデート市場においてシングルの人だと、未婚より離婚済みの方が多いくらいではないだろうか。しかしそれでも、離婚済みの人は口を揃えて「一度離婚しているのですが、大丈夫ですか?」と不安がる。離婚というのは、言葉にするよりも大変なことだ。莫大な時間とストレスがかかる。だが、財産を継続的に失うことになる男性と違って、原則的には女性は経済的なダメージはほぼない、むしろ、いわゆる火事場太りのようなことにも結果的になることも多い。養育費や生活費の支払いがある男性の場合、「バツイチでお金の支払いもあるのだけど、いいですか?」と腰が低くなるのはわかる。何しろ月に5万でも支払いがあれば、それは手取りから年間60万抜かれることを意味し、年収600万の人と付き合っているつもりが実質的に500以下の人と変わらないといったことになるためだ。だが、基本お金を取られない女性が腰を低くして「それでもいいですか?」というのは、何に対して「それでもいい」のかいまいち釈然としない。大きなストレスを乗り越えた経験はその人の結婚観、人生観を成熟させ、何ならより魅力的な人間へと変えているはずだ。「出戻り」だとか「お下がり」などという言葉はジェンダーレスが浸透し、女性をモノとして扱うことが禁忌となった今では完全に死語であり、また「元カレ」がいることと「離婚済み」であることというのは、実質的にあまり違いがない。子供がいるかいないか、養育費や慰謝料の支払いがあるかないかといった明確な状況があるのならばその確認は必要だが、ただ離婚してますというのは「で?」としかならないはずなのだ。社会の意識が実態に合わせて変わるのに、比較的長い時間がかかっている事例の一つではないだろうか。