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Pepero

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『敵』
★★★★★☆☆

筒井康隆原作、長塚京三12年振りの主演。モノクロで紡ぐ、静かなる崩壊。

渡辺儀介、七十七歳。
元大学教授でフランス文学専攻。

早くに妻を亡くし、祖父の頃から受け継がれる日本家屋にて独り暮らし。
大学時代の教え子からエッセイの依頼を受けたりしながら、日々を送っていた。
身体はまだまだ健康だが、預貯金の残額が尽きる頃が自らの終(つい)と悟り、遺言書も既にしたためている。

そんな儀介が送る日常に、ふと差し込まれるダイレクトメール。

『敵』がくる。

それをきっかけに、やがて儀介の日々は、緩やかな亀裂に侵され、妄想と現実の境界が曖昧になっていく。


全編モノクロで、儀介の日常が淡々と描写されていくのだが、これがとても面白い。
そして儀介は様々な料理を自炊して食べる。
晩酌も楽しむ。食べる。飲む。ひたすらに食べる。
もはやモノクロ版の『孤独のグルメ』かの如く。
しかもこれが全部美味そうで。
モノクロなのに色彩が勝手に浮かび、観客の食欲を刺激する。
何度生唾を飲み込んだことか。

さらには、年老いてもなお残る『性への衝動』。
これを3人の女優を使って巧みに表現してくる。


大学時代の教え子、鷹司靖子(瀧内公美)を自宅に招き、ディナーを振る舞い、ワインを傾ける。

行きつけのBAR『夜間飛行』に通うのは、その店で働くフランス文学を専攻する大学生、
菅井歩美(河合優美)に会うためだ。

そして先立った最愛の妻、信子(黒沢あすか)の幻影は、今日も儀介の前に現れる。

老齢を迎えながらも、健康に気遣いながら、それでも身なりにも気をつかい、女性の前では格好良くいたい。煩悩だって、まだある。



そんな儀介が、自分と重なる。

年齢的にはまだまだ儀介に程遠いが、この作品を通して、自分の『残された時間』を逆算したいという思いに駆られた。

淡々と進む前半に対して、怒涛のように押し寄せる後半の展開と、静かなる幕引き。

果たして、『敵』とは。

自分なりに答えは出たが、ここには書かない。

ぜひ劇場で、その答えを見つけて欲しい。

今独り暮らししているおっさんは、特に観るべき。


秀作だった。


#映画
#小さな幸せ
GRAVITY4
GRAVITY46
ハマ2021

ハマ2021

今日の映画鑑賞@ミニシアター。

「敵」筒井康隆原作。長塚京三主演。
今どき、モノクロ映画。でも全く気にならない。
むしろ、しっとりして落ち着く。

出ているキャストもぼく好み。
松尾貴史、松尾諭、瀧内公美、河合優実。

マイナー映画なので遠くの映画館まで足を運ぶ。
GRAVITY

モノクローム

亜蘭知子

GRAVITY
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