中村彝「頭蓋骨を持てる自画像」中村彝(なかむらつね)という画家を知ってる人は少ないのではないでしょうか。37歳という若さで亡くなったため作品数は少なく、何か団体をつくったとか新たな技法を開発したとか、そういった功績はありません。ただ傑作が残るのみです。結核を患い、夢だった軍人を諦め、家族はおらず天涯孤独の身。洋画の道を志しましたが、当時は資料もなければ実物を目にした者もおらず、日本画優遇の時代で洋画は大変厳しいものでした。本当は留学したかったのでしょうが、経済的にも身体的にも難しかったのではないかと思います。しかし、執念にも似た西洋画への渇望から、レンブラントやルノワール、セザンヌといった巨匠たちを模倣し、重要文化財に指定されるような傑作を作り上げています。この絵は晩年の自画像で、顔はルノワールっぽく描かれ、全体的にキュビスムと宗教画の影響が見て取れる作品です。個人的に衝撃的な絵でした。絶望でも諦観でもなく、死を知った者特有のこの表情は「聖人のよう」と評されており、その言葉がピッタリのように思います。私の家族も生死を彷徨ったあと、別人のように顔が変わりました。死というのは避けては通れない絶対的なもので、全生物に共通する根源的なもので、そして気高く美しいものということを再認識させられる不思議な絵です。言葉ではとても言い表せないので、実物を見にいくことを強く勧めたい作品です。茨城県近代美術館にて1/13まで見れます。#美術館 #アート #GRAVITY日記