『plagiarism』 デザートカーキに塗られた軍用旧ハマーが砂の尾を引きながら向かって来る。口の中はおろか鼻の穴まで砂で砂利砂利で、喉の渇きなどもう気にならないほど息苦しい。ストールから目しか見えない男達に「もっと伏せろ」とばかりに熱い砂に押し付けられる。砂漠は、雪が降り敷きったのと同じで恐ろしく静かだ。男達がMP5のローラーロックを解放し、ホログラムサイトを取り付ける音が重力と共に砂に沈む。丸腰で銃撃戦に参加するのは、勿論初めてで、これでビビらない人間なんて居ない。せめて向こうの人数が此方より少ない事を願うくらいしかない。願う?何に?信仰を持たぬとは、なんと浅はかなものか知る。戦闘は永遠に感じたが実際には三分足らずだったろう。飛び散る脳梁と肉。血は砂に吸い込まれてしまうから大した惨状ではない。まさかグレネードを使われるとは思わなかったけれど。 最近度重なる幻滅に辟易どころか僕の心は壊れる寸前だ。名前も知らない、国籍も違う昨日会ったばかりの奴等が僕の盾になって死ぬというのに、貴方が好きだ、貴方は素晴らしい、貴方は友達だなんて言っていた人達が次々と離れて行く。それでも自分と自分の病を怨むしかない。なぁ、お前のそれ、俺からイメージソース盗んだろう?良く平気な顔をしてられるな。地獄に堕ちろ。 洗濯機が鳴り、わだかまりが一つ咲く。シラケた午後の空気が風の下を滑る。どうして僕が絵描きの女の子ではなくてコレクションモデルだけをターゲットにするようになったか。何故二十代とだけ付き合うか。下衆い勘ぐりをしてもらって結構。その通りだから。