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みおこんぼ
真の変わり者で、クラシックコンサートは寝るために出向いている。
Kは、長年深い眠りにつけないそうで、クラシックは唯一の睡眠薬なのだという。しかも生演奏が1番深い眠りにつけるのだそうだ。
と、いうわけで、わりと長い付き合いであるこのKとは、クラシックコンサートに一緒に行くという点でだけ繋がっている。
今日のKについて記録しておこう。演奏開始3分で爆睡…いつものことだが、本当に不眠症なのだろうか。
Kが私と一緒にコンサートに行きたがるのは、とある理由がある。そう、いびきである。正直言って、たまに煩い。だから私からみて少しでもいびきの音感じたら、脚をつねったり顔の位置を変えたりしてなんとか音を抑える。ちなみに脚をつねったところで起きることはない。今回は2回つねったが、いつもよりはるかに少なかったので、とても良い演奏だったことは間違いないだろう。Kの熟睡度は演奏の良さとイコールなのだ。
演奏後の拍手で私はKを無理矢理起こす。Kが感謝の拍手をしたいと言うからだ。起きるとKは、「ハラショーハラショー」と呟きながら顔の横で拍手をする。それが一番音が響くからだそうだ。そして何故か靴を脱ぐ。なんだこいつ。休憩終わりにもうすぐ開演を知らせるチャイムが鳴る。Kが「10回」と言う。「何が?」と聞いたら、チャイムのフレーズが何回繰り返されたか数えたら、10回だったそうだ。どうでもいい。
休憩後、ベートーヴェンの演奏が開始後2分、再び眠りに落ちるK。寝るポジションが変わり、よくそれで眠れますね?という格好になっている。ちなみに周りに迷惑をかけぬよう、席は必ず1番後ろだ。こんなやつ前にいたら気が散って仕方ないだろう。ベートーヴェンでは、幸いにもいびきが無かった。感動的な演奏後の拍手。またも無理矢理Kを起こす。Kは心底感謝の表情で「ハラショーハラショー」とまた変な拍手をおくる。内心ブラボーのほうがいいだろうと思うが、口にはしない。
演奏後、しばらく共に歩く。「最高だったな」とKは言う。いや、寝てたじゃん。
とまあ、そんなKとの時間が、私はわりと好きかもしれない、という話。
#長文 #短編小説 #小説風に記録#GRAVITY小説部
コメント
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碧
そんな方いるんですね、すごく変わり者だけどクラシックに対する愛情も感じます。好きだからこそ爆睡できるんですね、心地よい音楽が眠りへ誘う... あとみおさんの文章すごく読みやすいです。色々読んでる方は、文章書くの上手いですよね✨
YoYo
クラシックなんて敷居が高いと思っている人に聞かせてあげたいお話です。 クラシック音楽には人を眠らせる力ががあるんだよと。
わんわん
なんか笑っちゃった!🤣🤣🤣 ……K!!