⑫裁判所から帰ってきた翌日、面会だと呼ばれた。父親だった。面会部屋はテレビのドラマみたいな冷たい雰囲気のある部屋ではなかったが、作りはほぼ一緒だ。分厚いいくつかの穴が空いたプラスチックの仕切りの前に座らされると、連れてきた警官が後ろの机の前に座り、会話の内容をノートパソコンに打ち込んでいく。「元気だったか?」「…うん」「とりあえず大丈夫そうでよかった。」「…うん」「会社の方にはこっちから話をしに行くから、お前はとりあえずここでちゃんと罪を償え。」「…うん」返事しかできず、何故かまともに顔を見られなかった。着替えも持ってきてくれたらしいがやはり点検が入り、紐付きは紐の部分は抜き取られるという。気がつけば捕まってからずっと同じ服だった。面会時間が終わり、再び部屋を出されそうになった。「元気出せよ!?」そう言われた。複雑だった。つづく