市民プールに行って泳いできた。何年ぶりだろう。優に10年以上は遠ざかっていたはずだ。だが、その前に地獄があった。もう毎度のことなので触れたくもないが、妹とひと悶着あり、最悪の気分に陥っていた。自分の気に入らぬことがある度に相手を拒絶するというあれ、いい年した大人が恥ずかしくないのかね。子育てだってしているのだろう。親がそんなことしていたら、示しがつかぬだろうに。こちらもぐらぐらして冷静さを欠いたため、持ち物を確かめずに出かけてしまい、現地で失敗に気づく。ゴーグルとタオルを忘れた。こんな初歩的なミスを。サーフパンツかビキニパンツかなど正直どうでもいい。タオルを忘れてどうする。もっとも、プールに向かう道すがら、ゲリラ豪雨が降り出して、全身ずぶ濡れになってしまった。だから、泳ぎ終わっても、どの道濡れた衣服を着ることになるため、タオルを忘れたこともどうでも良くなった。プールにはいくつかのレーンが設けられていた。今の自分がどれだけ泳げるのか自信がなかった。だから、慎重を期して、まずは歩行レーンから開始した。母を思い出した。生前、母がまだ元気だった頃、地元の公営プールに通っていると話を聞いたことがあった。動けなくならないように、健康増進に努める。母は、やるべきことをやっていた。散歩しかり、寝る前の柔軟しかり、毎日の血圧測定しかり。ある程度水に体を慣らした後、ついに泳ぐためのレーンに移る。まずは、初心者用レーンから。途中で歩いても良いように。大丈夫そうだ。泳げる。いよいよ普通のレーンに入る。ここは25メートル止まらずに泳ぎきらねばならない。1つだけ懸念があった。体力よりも、左肩が回らないこと。つまり、クロールはできない。水に入る前に、何度も肩を回してみたが、やはり、左腕を後方に旋回し、上方に持ち上げるところで激痛が走る。こりゃ駄目だ。今日は平泳ぎでいこう。そう決めた。平泳ぎは、楽だ。25も50も、そして、100もいける。私の中で欲が出てきた。クロールをしてみたい。プールから上がり、入念に左肩をマッサージする。上腕二頭筋の辺りを。そして、左腕をゆっくり回す。多少痛くても我慢して何度も繰り返す。行けるかもしれない。再度プールに入った。今度は、バタ足から泳ぎ始める。そして、クロールへ。続く