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ポプラ並木

ポプラ並木

孤高の船乗り女子、ある缶ちゃんのルームで釣りの話がでたから昔の話を思い出してしまった。

僕が中学生だった頃、友達と一緒に地元の堤防でよく釣りをしていた。僕は大して上手だったわけでもなく、友達にくっついて堤防の先からサビキ釣りという初心者でも気軽にできる釣りをするくらいだった。

そんなある日、僕の竿にアタリがきた。それは凄まじく力強いアタリで、竿が折れるのではないかと思うほどの本当に怪力だった。

慌てる友達、汗で滑る手元…心臓が跳ね上がるほど鼓動し、息もあがる。堤防には緊張感が走った。

どれだけ大きな魚なんだ…一体この魚はどんな姿をしているんだ…。釣り上げた先の未来を想像して興奮を抑える事ができなかった。

でも結局、プツリと糸が切れてその攻防戦は突然終わってしまった。巨大な魚は僕らの前に
姿を見せずに去っていった。

今でも思う。もしあの時、あの巨大な魚を釣り上げる事ができていたら…大きな魚を手にする事ができていたら…今の自分の人生と、少し違った人生を歩んでいたのではないかと思ってしまう。

運や縁といった不思議な結び付きもある魚釣り。そこで得た成功体験や達成感は、人生の節目節目で自らの背中を押して、今見ている景色の遥か遠くまで自分を連れてってくれていたのではないか。
あの時逃したのは魚ではなくて、ツキや運といった人生を左右する、とんでもない大きなものだったのではないか…

何十年も経った今でも、広くて深い海のどこかで、あのデッカい魚が尾鰭を優雅に漂わせて、僕を嘲笑うかのように泳いでいるのかな。 
中学生の時のあの悔しさが、今になっても忘れられない。



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