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Noriaෆ˚*
日本一の山を名乗るくせに姿を見せないとは……臆病者め!


天田
これが、曰くサイダーという。
硝子の中の粒がぷくぷくあぶくを吹く様は、何とも珍妙で、氷をひとつ入れると忽ち騒がしくなった。
私がそれを初めて喫したのは10歳になった時だ。
やたらと舌が痺れて、訳の分からない甘さにくらくらしたのを憶えている。
それから飲み過ぎると泡を嘔吐くようだったけれど、次第に慣れれば、時折コップいっぱいに飲みたくなる様な気がしたりもした。
歯を溶かしてしまうから程々に、と言われて、子供心ながら密かに恐れていたのも懐かしい。
大人になって問正せば、知らぬから余計に恐ろしいのだと祖母は笑っていた。全くもってその通りだ。
小さな頃の私は自分の真っ白な歯が、この氷みたくあぶくに包まれて瞬く間に無くなってしまうのだと思っていた。
結局今でも本当に溶かしてしまうのかは分からないけれども、これじゃあ子供は信じるに決まってる、と飲む度に思う。
だからこうして氷を入れたり、それでストローでクルクル混ぜたりして、気泡が弾ける音を楽しみながら、炭酸を抜くのが私の癖だ。
…決して未だに溶けるのが怖いんじゃない。
あまり飲まない私には刺激が強過ぎるだけ。
カラン、と小さくなった氷が透明の中から顔を出すと何だか見透かされるようで、刺激が丸くなった甘いサイダーを一気に喉に流し込んでしまった。
私はもう子供じゃあないんだから、こんなものちっとも怖くなんかないのだ。
子供の私よ、まったく臆病者め。

エリアス
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