『ジョイランド わたしの願い』★★★★★★★生涯初めて観る、パキスタン映画。伝統的な家父長制の家族、男尊女卑、LGBT。様々な『生き辛さ』を抱えながらも、それぞれの自由を求め生きた家族を描く重厚なドラマ。家長である父親の言葉が絶対である保守的な中流家庭、ラナ家。主人公ハイダルは、そんな一家の次男坊で失業中。妻ムムターズはメイクアップアーティストの仕事にプライドを持ち、ハイダルの代わりに家計を支えていた。伝統を重んじる厳格な父からは、早く仕事を見つけて男児を設けるよう、日々プレッシャーを受けているハイダル。そんな中、友人から紹介された仕事場で、ハイダルはトランスジェンダーのビバと知り合い、彼女のバックダンサーの職を得る。ハイダルは、自身の苦境をものともせず力強く自由に生き抜くビバに惹かれていき、妻ムムターズを深く愛しながらも、ビバとの一線を越えてしまう。職を得た夫ハイダルを支える為、ムムターズは半ば強制的に仕事を辞めさせられ、家事に就いて日々を過ごす。そんな中、兄嫁と共にジョイランド(遊園地)へと出掛け、ひとときの自由を感じるムムターズ。しかしその後、男の子を身ごもっている事が判明し、それが幸せなニュースであるにもかかわらず、そこから『何か』が狂い出す。父親は絶対。だからこそ家長は他人に弱みを見せてはならない。夫は働き、妻は家庭を護る。性の認識の違いにより、『女性』として認められたい『彼女』が突き当たる壁。妻を愛しながらも、『彼』に対しての想いを抑えられぬハイダル。働けぬストレスと、変わりゆく夫に身をよじらせるムムターズ。やがて訪れる静寂。全編通して、あまりにも美しい色彩が我々の脳を刺激する中、突如として訪れる虚無の『白』。パキスタンの大都市、レホールで紡がれる不器用な『愛』の物語が帰結する先は───。本国パキスタンでは、LGBTを描いた事で保守系団体からの反発を受け上映禁止命令を受けたが、監督・出演者たちの抗議によりそれは撤回され、現在に至る。この作品の凄いところは、『状況説明』を、『全くしない』こと。それでもなお、本作品を未視聴であるならば、良かったら是非。#映画 #小さな幸せ