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静狼
弁護士と話を終えると、別の場所に向かわされる。
そこは見たことがあるようでない場所。
コンクリートで埋められた部屋にまるで郵便局の窓口の様な不思議な場所だった。
留置所に搬送されたら、3日間は誰とも連絡は取れないし、取ってもいけない。
ここで連絡先を伝えることにより、初めて誰かに留置所にいることを誰かに伝えることができる。
自分の番になった。
誰に伝えるべきか…。
僕には付き合っている彼女がいた。
その彼女に伝えようと連絡先を書いた。
しかし、却下された。
先に親に伝えるべきじゃないのかと……。
親に、家族に伝えたくなかった。
あの日から顔も見たくなかった。
帰りたくもなかった。
渋々実家の連絡先に変え、伝えるとまたあの牢屋に戻された。
しかし、しばらくして帰ることになり、再び搬送バスに乗せられて高速道路を走っていく。
外は既に暗くなっていた。
留置所に戻ってきて、夕食になった。
普通にある業者の弁当だった。
牢屋に戻ると33番に話しかけられた。
「大変だったでしょ?」
なんかどっと疲れた。
つづく

静狼
早朝から大型の搬送バスに乗って揺られている。
朝起きてから一服の時間まではいつもと一緒。
そこから呼ばれ、他の人と等間隔にロープで腰と手首につけられた手錠に結び、ゆっくりと乗せられた。
高速に乗られたその搬送バスは、捕まる前に何度も見かけた、鉄格子が窓についた青い大型車だ。
そのバスが行き着いた先は裁判所。
バスが地下に降りると再び先に進まされ、そこ専用の牢屋に入れられる。
その牢屋は留置所より狭く、縦長に1Kの部屋分あるかないか。
その中に一部屋に3、40人も入れられる。
所狭しと詰められるのでろくに動けず、中に配置されている簡易トイレは仕切りすらない。
そんな動けないギチギチの肉の集まりの中で、ただひたすらに自分が検事に呼ばれるのをひたすま待たなければならない。
それは、今この場にいる人全員が呼ばれ終わらない限り戻ることができない。
遠くから声が聞こえる。
「……出してくれぇ……出してくれよぉぉぉ!」
男が狂いだした。
「うるさい!静かにしろ!」
警官が牢に警棒で叩き、威嚇する。
この状況、狂わない方がおかしい。
いつまで続くのか、どれだけかかるのか…。
考えるのをやめてどれだけ経ったろうか。
やっと呼ばれた。
つづく
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