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中大兄ショータ
ある国の王は、憂鬱な気持ちに苛まれていた。国は豊かな土地に恵まれて飢餓を知らず。侵略者の炎は、熟練の兵士達によって退けられる。人々は素晴らしき王に威光を讃えて、幾つもの書物に名を記す。
王にとって、そんな称賛はいらなかった。自分は優秀で、民に讃えられる事は当たり前の物だから。列をなして王に目通りする者達の称賛の声を適当に聞く日常。同じ表情、同じ言葉。
そこにシェオゴラス卿が、通りかかった。彼は王の悩みを聞き驚いた。
「なんと不幸な王か! 同じ称賛を聞き続けるなんて狂いそうだ」
彼は、王の気持ちが晴れる様な素晴らしい称賛の声を与えようと言った。その為には、1番称賛の言葉の多い者が必要だった。王は民に、自分を1番称賛する者に褒美を与えると宣言した。民はこぞって城に集まり、王を称賛した。激しい競争の後、1人の女性が勝ち抜いた。王にひざまづいた彼女は言う。
「この命が尽きようとも、陛下の栄光を讃えましょう」
シェオゴラス卿は、彼女の想いを聞き感動した。そして、素晴らしき祝福を彼女に与えられた。開かれた喉から見える声帯は引き延ばして捻じられていた。彼女の骨と髪から作られた弓には松脂が塗られた。おぞましい姿を見て、王や家臣達は震え上がった。しかし、その気持ちは一瞬で無くなった。シェオゴラス卿が彼女を弾くと、聞いたことのない極上の音が城に響き渡る。
「今、私の心の雲は去った。素晴らしき称賛だ」
王も彼女を弾き、今まで聞いたことのない称賛が響き渡る。
「王よ。次は男の称賛を聞いてはどうか?」
シェオゴラス卿の言葉に、王は満面の笑みを浮かべて最も称賛した男にシェオゴラスの祝福を施した。低い音は数千人の兵士からの称賛を聞いている様だった。祝福を受けた彼女と彼の音を合わせると、王の心は晴れ渡り、活力を与えた。
「もっと、称賛を聞きたい」
王は、素晴らしき称賛を求めて民にシェオゴラスの祝福を与えていく。民達も王に自分の称賛を聞いてもらおうとした。称賛の声に酔う王は気付かなかった。周りには、敵国の兵士に囲まれて槍を向けられていると。
王の最後の偉業は楽器を生み出した事だった。楽器の名は、初めてシェオゴラスの祝福を受けた女の名前をとった「ヴァイオリン」と。
王の国は滅びたが、王の称賛の音は今でもどこかで聞こえている。
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