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持続可能な未来の実現のためには、環境と経済、社会のバランスに注意する必要があります。ネクサス評価報告書が示した71の解決策は、そのための『手引書』になりえるのではないでしょうか」(土屋さん)

土屋さんは「未来を変えようとする多くの人の手に、この報告書が届くことを願っています」といいます。解決策のなかには、私たち一人ひとりができることが、いくつも示されています。物事のネクサス(結び付き)を意識して、まずは自分でできることから実践し、より良い未来を創りあげていきましょう。

ウェザーニュース

※この記事は以下の資料をもとに再構成しています。
国立環境研究所 社会システム領域「生物多様性、水、食料、健康、気候変動の危機を同時解決するために—IPBES『ネクサス評価報告書』を読み解く」
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気候変動は、食物連鎖に狂いを生じさせ
自然の流れを崩壊させていくと考える大福

世界はいま、気候変動の影響で生物の生息環境が変わって多様性が失われたり、干ばつなどによる水不足で食料不足が引き起こされるなど、さまざまな危機に直面しています。

気候変動、生物多様性、水、食料、健康問題はそれぞれが密接につながっていて、その関係性を理解したうえで、総合的な対策を同時に取らなければなりません。

国際的な科学者組織「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES=イプべス)」は2024年12月、さまざまな問題を同時解決するための具体策、「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価報告書(ネクサス評価報告書)」を公表しました。
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対策は10の課題別にまとめられています。なかでも『持続可能なかたちで消費する』については、多くの人々の日常生活にかかわる対策が並んでいます。

『洋上風力発電』や『陸上の太陽光発電』などエネルギーに関する対策は、気候変動の緩和にはポジティブな影響を与えますが、生物多様性にはネガティブな影響がありえます。

逆に、『持続可能で健康な食生活』や『肉類の過剰な消費の削減』など食料に関する対策は、水を除くすべての要素にポジティブな影響があり、ネクサス全体の改善につながる可能性があります。

私たちの日々の食事が生物多様性と健康と気候変動の問題に深く関係していることも、繰り返し強調されています。

個別の対策をうまく組み合わせていくことも重要です。たとえば、健康のために水田での野焼きを禁止したことで農業者が冬期の湛水(たんすい)を導入するようになり、それが自然再生の取り組みにつながり、さらに気候変動の影響を軽減するための湿地の創出に連鎖していった事例が紹介されています。

こうした連関や依存関係を問題解決に生かしていく考え方を『ネクサスアプローチ』と呼ぶことにしました」(土屋さん)

すべての要素を同時解決に結びつけるためには、どうすればいいのでしょうか。

「組織の縦割りを超えてビジョンを共有し、生物多様性、水、食料、健康、気候変動に関わるステークホルダー(利害関係者)が協力するネクサスアプローチへの転換が、世界、国、地域のさまざまなレベルで必要です。
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報告書の執筆に携わった国立環境研究所社会システム領域(地球持続性統合評価研究室)主任研究員の土屋一彬(つちや・かずあき)さんに、報告書の内容や同時解決の可能性などについて、解説して頂きました。
「ネクサス評価報告書」って何?

IPBESとはどのような組織なのでしょうか。

「IPBESは2012年、生物多様性についての“世界の知恵”を集めるための国際的なプラットフォームとして誕生しました。2025年1月時点では、世界147カ国の政府が参加し、『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の生物多様性版』とも呼ばれています。

IPBESの主な役割は、生物多様性に関する知識を報告書の形で取りまとめることです」(土屋さん)

ネクサス評価報告書は、どのような目的、体制で作成されたのでしょうか。

「まず、ネクサスは『結び付き』を意味します。

報告書はSDGs(持続可能な開発目標)達成に向け、『生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価』を目的としています。3年かけて、57カ国165人の研究者によってまとめ上げたものです。

SDGs項目の間の複雑な相互連関について、縦割り型のアプローチではなく、生物多様性の観点からひもといていくことが期待されました」(土屋さん)

報告書のタイトルに、「気候変動」がありませんが。

「執筆にあたり、気候変動の問題抜きでネクサスを議論することの限界が指摘されました。そこで、タイトルになかった気候変動も要素の一つとして扱われることになりました」(土屋さん)
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