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かいわれ

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山屋が地形わかってるように語るけど一向に遭難者見はみつからないな、せいぜい健脚自慢が関の山
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ホイミスライム

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【ホイミスライムの自衛隊怪談】
第10話『深夜のマラソンランナー(後編)』

「こんな時間にマジかよ、凄いな」
彼はそれほど驚かなかった。何故なら近く中隊対抗の持久走大会、一般で云うところのマラソン大会が予定されており、日々各中隊の健脚自慢が猛練習をしていた。
「気持ちはわかるが服務違反だからなぁ」
彼は隊舎入口に備え付けの傘を差しグラウンドに近付くと走っている隊員に声を掛けた。
「練習したいのはわかるがもうこの時間で雨も降ってる。止めて部屋に戻って下さい」
声を掛けられた隊員はゆっくりと彼の方に振り向くと一礼して違う建物へと走り去って行く。そんな隊員に多少の違和感を感じつつも、
「俺にはあそこまで出来ないなぁ」
などと思いながら残る巡回コースを回った彼は糧食班隊員を起こすと3直隊員と交代し、勤務を終えた。

朝になり事務室で当直業務をこなしていた彼は思い出したように昨夜のマラソンランナーについて当直幹部に報告した。一通り話を聞いた当直幹部は溜め息混じりに、
「あぁ、もうそんな季節か」
当直幹部の少し曇った表情に彼はどういう事かと質問した。
昔、この駐屯地には持久走が大好きな隊員がいた。彼の健脚振りは凄いもので勝てる隊員もいなかったらしい。そんな彼がある年の持久走大会の数日前に倒れて亡くなった。心臓麻痺だったらしい。
依頼、持久走大会を間近に控えた雨の夜になるとグラウンドをひたすら走る彼の姿が目撃されたという。
「ここ数年は出てなかったんだがなぁ」
遠い目で話す当直幹部の前で彼は必死に記憶を反芻していた。
「あれは幽霊だったのか?でもこちらの呼び掛けに反応したし、あんなにはっきりと・・・あっ!」
彼はあの時に抱いた違和感に気付いた。時間は深夜の3時くらいで真っ暗だったが彼は懐中電灯をポケットに入れたままだった。が、彼の目には走っていた隊員の細かい服装までが確認出来たのである。
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