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大学2回生のクリスマス。
はじめてクリスマスマーケットを訪れた。

道路がひとで埋め尽くされ、秒速5cmほどでしか進めない。普段なら10分ほどで着く会場に30分以上かけて着いた。ようやく着いたそこは、まるで別世界だった。

大きなクリスマスツリー
その下でまわる大きなメリーゴーランド
多様なイルミネーション
海外のバンドメイド雑貨を売る屋台
ドイツ産のポテトやソーセージを売る屋台
精細につくられたマグカップにホットワインを注いでくれるサンタのようなおじさん
ほどよい音量で流れるクリスマスミュージック
そして、ひと、人、ヒト

ヨーロッパの雰囲気に満たされていて、夜なのに眩しくて、何度も瞬きをした。わたしがずっと憧れていた「クリスマス」の世界がそこには確かに存在していた。

そんな夢のようなクリスマスから数年、あの感動を忘れられず、今年も同じ場所を訪れた。

道を埋め尽くす人混みはなく、10分ほどで着いた。お昼だから空いているのだな、と思いながら会場に着いて、我が目を疑った。
そこにあの「クリスマス」はなかった。

大きなツリーは変わらずあるものの、メリーゴーランドは見当たらず、イルミネーションもツリー以外には施されていない。屋台も減り、真似事のような料理と飲み物が売られている。サンタのようなおじさんもおらず、マグカップはワインとは別で買うように、と言われた。訪れるひともまばらになっていた。

同じ場所なのに、違う場所のように見えた。ずっと胸を躍らせていただけに、急速に萎んでいく気持ちに、悲しさが募った。

あとで調べると、コロナ禍で、ドイツ人技師や団体を呼ぶことができず、メリーゴーランドや本場の屋台は中止となってしまったらしい。それでもマーケットを維持するために、日本人だけで、当時の再現をしているような現状だとか。

「クリスマス」は、現実と地続きの存在で、こんなにも簡単に失われてしまうのか、と思った。一世を風靡した例のウイルスは、わたしの大学時代と恋人を奪っていっただけでなく、「クリスマス」まで奪っていってしまった。当てどころのない悲しみとやるせなさに苦しくなる。

いつか、「クリスマス」は帰ってくるのだろうか。またあの煌めきを体感できるのだろうか。
いつになるかもわからない日を待ち侘びて、クリスマスを過ごそうと思う。