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すべてのザ・キュアーのレパートリーの中でも、もっとも愛してやまないのが「Just One Kiss」です。
もともとは、彼らの最高傑作でもある4thアルバム、1982年にリリースされた「Pornography」のツアーの後、二人組になってしまった彼らが、スタジオワークを駆使し、12インチのヴァイナルで、ダンス・リミックスをリリースすることがトレンドだった1983年にリリースしたシングルのB面曲です。
ベースラインが基調になったソングライティングで、ドラムキットを使わず、タム、スネア、ハットそれぞれを個別に録音しただろうトラックを組み合わせ、透明感のあるダンサブルなサイケデリアに仕上げています。
この曲の7インチ・バージョンもあるにはあるんですが、A面のこれまた傑作曲「Let's Go to Bed」同様、12インチ収録のエクステンデッド・バージョンが格段に素晴らしい。
ただ引き伸ばしたのではなく、おそらく12インチバージョンをまず完成させた後に、7インチ・バージョンをエディットしたものと思われます。
リリックは冒頭から、誰もが記憶してから消してしまったいくつもの過去の悲喜劇をレトリカルに表現した言葉を綴っていき、その度に「君は覚えているか?」と聞き手に問いかけます。
つまり、この曲は、後悔や失意、あるいは、悔恨の念を抱えたまま、この社会から失われ、人々の記憶から抹消されることになった社会のはぐれ者達へのレクイエム。
「たった一度のキスのために誰かが死んだ」―これは、今もこの瞬間に世界のどこかで起こっていること、そしてこれから先もずっと続いていくことについての歌。