10年くらい昔の話です。今日みたいにとんでもなく寒い日の夜、終電に乗り遅れてしまって、タクシーで帰るなんて発想にも至らないくらい、そのくらい若いころの話です。始発が動き出すまでどう生き抜くか、というのが札幌ではとても重要です。そのへんで寝れば死にます。(春になると氷漬けの酔っ払いが見つかるように)ともあれ、その若い日の夜に訪れたのは当時まだ珍しかったメイド喫茶でした。夜中の2時くらいに入ったら、常連と思しき男性が、深夜のシフトをひとりでこなしているメイドさんに「日本のダム全集〜北陸編〜」のようなDVDを披露していたのを覚えています。たしかその席には友人もいたはずなのでで、まぼろしではないはずなのですが、死ぬような寒さの中で開けた扉の中で重力式コンクリートについて語る男性と、それに対しプロとして相応しい態度で対応するメイドさんの姿を今でも鮮烈に覚えています。それこそ今日と同じようななんでもなく寒い日の出来事でした。あのような不思議な夜に、また巡り会いたいと今日も思っています。