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エクリチュール❤︎

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西垣通の『集合知とは何か』(中公新書)を読んだ。
この本のはじめで誠実に向き合うことの大事さという学者にとっての必要条件(原発事故を受けての原発ムラの学者にはこのいわゆるところの「知的誠実さ」が欠けていた)を述べているだけあって、この本は誠実に書かれている。
私の興味ある哲学者のシモンドンにも言及がある(正確にはメディア学者のハンセン経由で)。
シモンドンは「超個体(transindividual)」という概念について言及しているのだが、それについてもITテクノロジーによってばらばらである生物学的個体がより上位の状態に以降できるという文脈で言及されており、西垣さんが言っている「デジタル・ナルシス」という考えにも通底する内容なのだろう。日本という国におけるコンピュータのあり方として身体知や感覚知を反映したいわゆる暗黙知を搭載したコンピュータのあり方を提示している。
10年ほど前の本だが勉強にもなった。
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エクリチュール❤︎

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ユク・ホイの『芸術と宇宙技芸』(伊勢康平訳)を読んだ。春秋社から出ている本。東浩紀が推薦している。
内容は一読しただけなので自分が理解した内容はわずかだろうが、これだけ知的緊張を保ちつつ展開できるのは非常に技がいる。
私が興味を持っているシモンドン(ジルベール・シモンドンGilbert Simondonという技術哲学の研究者のこと)にも言及がある。
宇宙という問題について考える人文学も必要。
そう思わせてくれた。またそのうちきちんと読みたい。
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西垣通さんの『集合知とは何かーーネット時代の「知」のゆくえ』(中公新書、2012)を読んだ。
この本は最初に学者としての最低条件である知的誠実さへの言及がある。いわゆる御用学者としての原子力村の学者にはこれがなかった、と。
実際この本を読むなかで私はこの知的誠実さとは何かということを考えざるを得なかった。
いわゆるドナルド・トランプ的な切り返しのコミュニケーションができるだけでは、私は学者にはなれないとぼんやり感じていた。質問が例えば学会発表がある、それに対してディベート感覚で勝ち負けの感覚でただ単に勝つこと(議論に勝つこと)が問題ではそこではないと思っていた。
試問が切り抜けるだけで終わっていた時には感じなかったものの後から振り返り感じたのだ。
あれで良かったのか、と。
私は本当に深い次元で相手の言いたいことを受け止めて口先だけでやり返すのではなく、相手の真意というか言いたいこと(これはラカン的な現実界への感受性にも関わる)を受け止めるだけの器量はそうした知的誠実さのない学者(西垣によれば、これは最低条件を満たしていない学者になる)にはあるのか、と。

さて、そういう話になってしまったが、実際本書にはデジタル化された自己の可能性について考える想像力豊かな記述となっており(もちろん誠実さを感じた)、筆者が別のところで言う「デジタル・ナルシス」についても関連があるのだろうという記述があった。そこではメディア学者ハンセンの論文への言及があり、そのハンセン論文にはシモンドン(フランスの哲学者)への言及があった。「超個体(transindividual)」は、生物学的自己をバラバラなそれを乗り越える余地があるのである。ITテクノロジーによってその乗り越えは行われるのか、と筆者も問いかけていた。
筆者の『基礎情報学』や『続・基礎情報学』への論及があるので、興味のある人はそれも読めると良い。
私はデジタル・テクノロジーに可能性を感じたり限界を感じたり日々葛藤もあるのだが、本書を読んでその可能性の側をしっかり考えるのも工学的知性のある人はできるのだろうと思った。
日本は暗黙知や身体知を活かした集団知を纏め上げるコンピューターを開発できるのか、そういう最後に出てくる問いは私たちにとっても(おそらく)大事だろう。
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