2025年のとばりがおりての最新＆人気コンテンツ -Gravity SNS

隣県のショッピングセンターに出かけて、その駐車場にクルマを停めた。「ておちゃんは、クルマの中で待っててね」と声をかけて、さぁお買い物にとドアを開けた瞬間… 後部座席に居た彼が何を思ったか… いきなり素早くクルマの外に飛び出した。呆然としながらも、Sharは急いでドアをロックして、彼を追いかけた。「待て、待てっ！」と大声で叫びながら、駐車場の横の茂みの中を追った。この先は道路、嫌な気持ちが湧き起こる。全力で走るけれど追いつかず、彼は道路手前の用水路に飛び込んだ。Sharも深さ1メートルのその用水路に飛び込み、また追いかける。「待て、待てっ」と大声を張り上げながら、彼に迫るが、そのうちコンクリートの天板に日差しも遮られ、視界は暗く、水しぶきの音も消え失せ、姿形を見失った。水深20センチだか、Sharは全身ずぶ濡れだった。一旦引き返して、道路上に上がったSharは、警察に電話した。ショッピングセンターにも電話をかけて、事情を説明して、迷い猫がいれば捕獲して欲しいと訪問客にアナウンスしてもらった。午後4時過ぎ、警察官2人の到着を待って、捜索開始。駐車場界隈を、「ておちゃーーーーーーん」と大声で声かけながら、歩き回る。2時間探したけど、なんの痕跡も無く、日が暮れる。警察官に遺失届けを提出し、警察官は帰って行った。クルマから懐中電灯を出して、夜のとばりがおりてもなお、黙々と周辺を探し回る。午後8時過ぎ、諦めつつも「おーーーーーーーい」と叫んだ。かすかに「にゃ」と聞こえた。歩道の下の用水路の中に彼が居ると確信した。しかし、コンクリートの蓋で用水路の中の様子は全く見えない。数十メートル歩いたのち、鉄の格子のグレーチングの蓋を見つけた。火事場の馬鹿力とはよく言ったもので、なんとか1人でその鉄の蓋を持ち上げずらすと、用水路の中が見えた。1メートル下の用水路に飛び込んだ。静まり返った用水路の闇に、バシャバシャと水飛沫がこだまする。「テオっーーーーー」と叫ぶと、「にゃ」と声がする。用水路の中を腰をかがめながら、必死に歩く。この先か、この先かと懐中電灯で照らしながら、這ってでも歩く。ようやく光の先に、彼の姿が見えた時、いっきに涙が出た。