ドアを開けるとカウンターに座っていた人が笑顔になりました。男性か?女性か?迷いましたがあまり気にしないことにしました。私は人の「心の入れ物」にはあまり興味がありません。この視点で今の世界をのり切ってきました。「11時から開けていて初めてのお客さんです。カウンターでじっと座っていたらイヤな思い出がいっぱい蘇ってくるし、わたしは何やっているのだろうって鬱になりそうでした」私が入ったのは16時過ぎでしたので、5時間以上1人だったのでしょう。堰を切ったかのように絶え間なく話します。「ほんとはバーテンダーやりたかったのです。17時に来る店長にだまされました」私が浅草に住んでいると言うと「浅草で働いていました。すし賢の並びのまるごと北海道があって…」ここで私はわかりました。「カメオですね」「そうですそうです。今も写真に顔が残っています。お給料良かったのですが、わたしはやっぱりおかまとしてでなく、女として接してほしいから辞めました」17時前に店長が出勤、彼女は店長にも絶え間なく話しかけます。一瞬『赤毛のアン』ってこんな風に息つく暇もなく話すんだろうなと思いました。彼女は着替えてきたら、カウンターに座っている私の隣りに座って、また話しかけてきました。彼女にお酒をごちそうしたら、今度は好きなお酒の話、ほんと絶え間なくしゃべっています。でも、嫌な感じは一切せず楽しかったです。独りでさびしさを感じている人は、彼女が1人でやられている日曜の昼間に来ればいいなと思いました。