#文体模写 #稲川淳二 今から、ちょうど一年くらい前の話です。その日もね、この道を彼女を乗せて車で走ってたんだ。大雪が降ったせいでね、渋滞にハマっちゃって、車がズラーって、ズラズラーって長い列でね。その並んだ車の赤いテールランプがポワ〜って綺麗でね。隣の席で寝てる彼女を見たらね、子どもみたいに笑いながら寝てるんです。「眠れる森の少女」みたいだなぁ〜って私、見てたんです。渋滞も少し解消してきたし、車を出すので彼女をね、ちょっとゆすって起こしたんですよ。そしたらね、彼女が眼をかっ!と開いてね、怨めしそうな顔で睨んだあと、私の手をぎゅぎゅっ!!って握ってこう言うんです。「愛が!愛が欲しい!!」私、わーっ!てなって、何でもないような事が幸せだったんだな〜って思いました。二度とは戻れない、何でもない夜の事のお話しでした。#稲川淳二が虎舞竜のロードを怪談風に話したら