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りょちん♂
第5話(後編)
目を拭い居間に入ると、卓には朝食が並んでいた。
味噌汁に蒸かし芋、お茶碗に盛られた少量の玄米飯。
”贅沢は敵”というが、まさにこれを体現したような食事だ。
食材は質素、だがしかし母の料理には変わらない。
手を合わせ、「いただきます。」と言い、左手を茶碗に添えた。すると、とんでもない声量に空気が揺れた。
「マサル!!」
お父の声だ。
起き抜けにキヨシが、笑いを堪えて走り去ってっ行ったのを見て、何となくこの展開になることは察知していた。
「俺はお前をそんな軟弱な男に育てた覚えは無い!
日本男児ならば、涙を流すんじゃない!」
お父はそう言い放つと、食卓に座っていたオレの胸ぐらを引っ張った。
「歯ぁ食いしばれ。」
お父が鬼の形相で、オレの顔を睨む。拳が強く握り込まれ、大きく振りかざされたその時、母が止めに入った。
「やめてください!マサルは今が大切な時なんです。あなたも分かっているでしょう?」
大切な時...?どういうことだろう。
「だからこそだ!男ならば、そして俺の子ならば、強くあらなければならない。涙なんぞを流す軟弱な男では、この先が思いやられるだけだ!」
お父の言うことはもっともだ。オレはいつだって殴られる覚悟は出来ている。
お父はあらためて、拳を振りかざす。
オレは歯を食いしばり、目を瞑った。
「あなたはそれでいいんですか!?」
母の強い声が響いた。
お父はその声に怯んだのか、胸ぐらを掴んでいた手は緩み、拳はゆっくりと降ろされてゆく。
しばしの沈黙が流れる。
しかしそれも、すぐに打ち消されてしまう。
「うわぁぁぁん」
14歳の長女のチヨが、泣きじゃくる5歳の次女サチコの手を引いて、居間に現れた。
「みんな、どうしたの?」とチヨが問いかけるも、誰も何も答えられずにいた。お父はなんとも言えない表情のまま食卓につき、今朝の新聞を開いた。弟のキヨシは、なんだかバツが悪そうな顔をして背を丸めている。
「ごめんなさい、なんでもないわよ!」
母は何事も無かったかのように、食器を並べ始めた。
ふと、お父の方に目をやると、その手は震えていた。
#創作小説
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茉莉(まつり)
「嘲笑うのは」
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
『ごめんなんていらないから
私のことは忘れて
もう何も陰でいわないで』
彼女は
そう言って
私に詰め寄った
分かってる
なぜこんなふうに
冷たく言われるのかも
分かってる
なぜこんなふうに
言わせてしまったのかも
後悔なんて
どこかへ行ってしまってた
誰かが言ったから
『最初に好きになったのは
貴女の方だったのにね』
引き金なんて
ホントは重くないのね
ヤケになれば
ほんの数秒で引ける
私の言葉は
暴発した銃弾だった
結局傷付いたのは
私の方
私はいつだって
自分勝手だったから
彼女を大事な人と
引き裂いたのも、私
ただ
それが正解だと思ってた
彼女がここに、
私のもとに来たのは
今の私を
嘲笑うためだ
私にだって大事だった
最初は私が友達だったんだから
なのに
隠してた弱さを知られた
暴走した言葉を聞かれた
私は…
私の中の悪意に
心を預けてしまった
もう
時は戻らないし
もう
あの人の心が
私に向くこともない
取り返しがつかない
とはこういうことなのね
あの人は
きっと彼女の元には
戻るのだろう
『ごめんなんて言うはずないわ
私のごめんなんて
嘘にしか聞こえないでしょ』
そう答えたら
彼女は嘲笑う顔ではなく
痛そうな苦笑いを浮かべていた
その顔を見て
なぜだか
彼女と友達になった時の
きっかけを思い出して
私は自分を
嘲笑った

ゆうこ
父がだいぶアレなので母のヒステリーが毎日爆発。さらにそこへ子供部屋おじさんと化した弟がふんぞり返り、、、母のストレスが限界点。。
こんな年になっていつまで家事やらなきゃいけないの!と叫ぶ母に「ご飯の用意も洗濯も別に放っときゃいいじゃん。子供じゃないんだから自分でできるし」っと言っても母は何故かそれができないらしい。
弟は実家近くに職場があるからお昼は帰ってくるんだけど、それもわざわざ手作りする母😖
メインにサラダに汁物って豪華定食。。
放っといても適当に食べるんだし構わなくて良いでしょって言っても「栄養偏る!そしたらまた体調崩す!」とかで作る母。
たしかに弟が一人暮らししてた頃、まいにち社食の素うどんばっかり食べて大変なことになったけど、それはいい歳こいてマトモに自己管理できない自業自得なのでは。。。
うーん、、、なんていうか、過保護なんだよね。。マジで放っときゃいいのにそうやって料理洗濯掃除ぜんぶやっちゃうから弟も何にもしないんだと思う。
弟も30過ぎてるんだけど、彼が自分で一から材料用意して料理して片付けしてるの、まじで見たことがないんだよ。何回か「簡単なものでいいから料理して食べさせて」って言ったことあるけど「いや〜うーん」みたいな誤魔化しだけ。
自分が帰省してる時はなるべく母を動かさないように家事やるけど、連休で数日過ごしただけで何もしない弟に何度かキレそうになった。。
人が作った料理もテーブルに待機して待つだけで他の家族の分の配膳すらしない。スマホいじるばっかりでさっさと食べない。母が温かいうちにと出した料理は冷めてから口にする。シンクまで食器は持っていくけど自分の茶碗すら洗わない。
何なんだろう、ほんとに。何様なんだろう。
ずーっとモヤモヤしっぱなし😶🌫️
結局、、母は自分の今の状況を嘆いているし実際辛そうなんだけど、、私がいくら「放っておけ」って伝えてもデモデモだってで構う構う。
どうしたらいいんだろう、ほんとに。
愚痴でした😔
#愚痴らせてください

小説ニキ
カードがめくられるたびに歓声が上がり、ルーレットの回転音が心地よいBGMのように響く。
そんな中、一際目立つ男——黒髪の長い髪を無造作に束ねたニモは、積み上げたチップを眺めながらニヤリと笑った。
「よーし、今日はツイてるぜ!」
隣に座っていた金髪の美女がニモに微笑む。
「運がいいのね、私にも分けてほしいわ」
「もちろん♡でもその代わり、君のハートももらっていい?」
軽くウインクを飛ばすと、美女はくすくすと笑った。
「ふふ、面白い人ね」
そんな甘い空気の中、ニモはカードをめくる。
「じゃあ、全部いくか!」
テーブルの上に大量のチップを投げ出し、ディーラーと最後の勝負に出る。
場の空気が一瞬張り詰めた。そして——
「バーストです」
「……は?」
ディーラーの冷静な声が、ニモの脳に直接響く。
「お客様、全てのチップを失いました」
静まり返る周囲。ニモはぱちくりとしたあと、乾いた笑いを漏らした。
「ハハ……いや、ウソだろ?今のは見間違いじゃない?」
「現実を受け止めてください」
そこへ、カジノのオーナーらしきスーツ姿の男が現れた。
「ニモさん、借金、どう返してもらいましょうか?」
「……ま、待て待て。まだ終わっちゃいねぇだろ?」
「いいえ、終わりです」
スーツ男が指を鳴らすと、屈強な借金取りたちがズラリと並ぶ。
「逃げるのはナシですよ?」
一瞬の沈黙。
「お前がそう思うならそうなんだろうな……お前ん中ではな!」
そう叫んだ瞬間、ニモは全速力で逃げ出した。
「待てコラァァァ!」 「誰が待つかー!」
夜の街を駆け抜けるニモ。その後ろを借金取りたちが鬼の形相で追いかけてくる。
「クソッ、なんでこうなるんだよ!」 「お前が全部賭けたからだろうが!」
必死に路地裏を駆け抜け、ニモは突然ポケットからカエルを取り出した。
「くらえ、カエルアタック!」
カエルを投げる。ピョン、と軽やかに跳ねるが、当然ながら借金取りには何の影響もない。
「……なにしてんだオイ」 「……ワンチャンあるかと思ったんだよ!」
絶体絶命かと思われたその時、ニモは見覚えのあるバーの扉を発見。勢いよく飛び込んだ。
「ナモちゃーん!ツケで酒一杯!」
#初投稿 #小説 #オリキャラ #短編小説


ゆうのすけ・A
母がお風呂からあがってこないな…嫌な予感がしてのぞいたら、湯船で立ち上がれなくなってた。顔は浸かってなくて意識はあったけど混濁してる。
慌てて抱きかかえて湯船から出そうとするけどあげきらない。力無し。手が滑る。父をたたき起こして助けてもらってなんとか引きずりだす。
救急車呼ぶ。
母の服とかかき集めて、自分も着替える、その間に父が身体を拭いてる。サイレンが聞こえる。水を飲ませる。
救急隊員3人。靴カバーをつけて上がってくる。
グニャグニャでパンツも履かせられない母を両側から支えて居間のソファーまで連れて行ってくれる。
しばらくして意識のハッキリしてきた母が病院には行きたくないと言う。
救急隊員も大丈夫そうだと言うので寝室まで連れて行ってパジャマを着せる。
平身低頭して救急車に帰ってもらう。
何事かと出てきた向かいの家の人にお詫びと説明。
昨年くらいから一気に弱ってきた母。
ベッドから転落してからさらに動けなくなってる。転落時に打った顔が内出血して痛々しい。
夜中トイレ行けるんかな?脱水症状にならんかな?ペットボトルのお茶渡してあるけど自分で飲めるかな?わしこのまま寝てしまって大丈夫?

k(CV:五ェ門)
従来は主に古新聞を出すだけだったが、ここふた月、事情があって、長年大事に持ち続けてきた書籍や書類なども手放すべく、日々思案してきた。
押入に仕舞いこみ、長らく眠らせていた段ボール箱も、明日に備えて数日前から引っ張り出しておいた。
この際、捨てられるものは捨ててしまわねばと。
一つ目の段ボールには、大学時代のノートや卒業後初めて勤めた会社の研修テキストなどが入っていた。
しかし、これも選別した上で残したものだ。まだ踏ん切りがつかない。
別のノートを手に取ると、初めの1ページだけ文章が書かれていた。
日記とも手紙ともつかぬもの。
内容は誰にも言えない。
八月のクリスマスを思い出した。
次の段ボール。
一度開けた母からのレターパックが入っていた。
中には、本2冊と酵素サプリのリーフレット。サプリの方は、おそらく既に飲んだのだと思う。
そして、USBメモリ。
何の気なしに封筒の中を確かめると、中から白封筒が出てきた。
未開封の手紙だった。
これまで母からもらった手紙は、昨年11月2日に全て読み直した。
母の手紙は、それで全てのはずだった。
思いもよらぬところから、もう1通現れた。
2016年8月31日。
弟のブータン旅行からの帰国報告から始まる。
次に食事について。
当時ダイエット中だった私に向けて、留意事項を示すとともに、朝昼晩、各食献立の具体例も挙げている。
続いて本。
私の帰省時には既に買ってあったが、自分で読み、納得できてから薦めようと思ったとあった。
最後は酵素同封の旨の通知。
”9月に入っても、残暑は続きますが、秋口は夏の疲れが出ますので、なにより食事をしっかりととって下さいね。
ごはんを控えて、おかずを多くとることに心がけて下さい。
母より
※USBにはこれまで撮ったあなたの写真を入れてあります。”
鼓動が早まり、息が苦しくなった。
USBをPCに挿し、各フォルダに格納された画像を開いていった。
母が亡くなってからこれまで、数え切れぬほど涙を流してきた。
色んな種類の涙を流してきた。
おいおい泣いた。
見覚えのあるファイルもあった。
「4人がそろって」
昔、母がメールで送ってくれた画像と同じものだった。
続く
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