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ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯
#松本隆 #詩集
☆『白い封筒』
はじめての手紙をあなたに書きます
白い便箋にペン先がふるえて
読み直すと出すのがこわくなりそうだから
好きです。と一言書けたならいいのに
かけないままに文字を並べてます
どうぞ言葉にならない気持ち読んでください
はじめての愛を封筒につめます
あなたの名前を宛て名に書きました

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ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 122
#松本隆 #詩集
☆『都忘れ』
真っ赤なポストに手紙を入れて
帰りに市場で林檎かったわ
青くてすっぱいふるさとの味
言葉と一緒に送りたかった
風なびく麦畑
走り去る雲の影
なつかしい横顔に
よく似てる雲だった
祭りの準備に忙しそうな
太鼓の響きが夏を知らせる
今年はあなたも帰って来てね
昔の仲間も集まるはずよ
風なびく麦畑
走り去る雲の影
工場の青い屋根
この街も変わったわ
今年も咲いたわ都忘れが
あなたを忘れてしまいなさいと
こわいの 私うなづきそうよ
お願い返事は必ず書いて
風なびく麦畑
走り去る雲の影
流れゆく年月を
見送って泣いたのよ


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 100
#松本隆 #詩集
☆『夏しぐれ』
君の置き手紙 また読みかえし
ふと見る外の雨
さよならしるして ふるえた文字が
何故だかせつなくて
涙滲んだ文字が読みとれない
ぼくはくちびる噛んで
ひとり耐える ああ
白い便箋に淋しいきみの横顔眼に浮かぶ
きみの哀しい気持ちつたえるように
乱れ髪のような雨 胸にしみる ああ
雷鳴が響けば ふるえてすがる
あどけないきみだった
春夏秋冬と 暮した日々の
想い出がかけめぐる
ラララ… ラララ…
ラララ… ラララ…
涙滲んだ文字が 読みとれない
ぼくはくちびる噛んで
ひとり耐える
きみの哀しい気持ちつたえるように
乱れ髪のような雨 胸にしみる
乱れ髪のような雨 胸にしみる


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 82
#松本隆 #詩集
☆『七つの願いごと』
四月になれば何かが変わる
ふと目にとまる路ばたの花
心ひかれてしまうのは
思いもよらない恋が芽生えたから
五月になれば何かが変わる
あなたの白いズックが光る
真っ赤な靴をひきよせる
歩きはじめれば愛という名の径
六月になれば何かが変わる
小雨ふる日に手紙がこんな
待ちどおしいと想うのは
淋しい心が滲んでしまうから
七月になれば何かが変わる
眠れない夜 羊を数え
それでも何故か寝つけない
羊の隣りにあなたが見えるから
八月になれば何かが変わる
白いペンキの避暑地の店で
見つめあう瞳がはずんでる
サイダーびんから気球が飛んでゆく
九月になれば何かが変わる
すれ違ってくふたりの会話
ふみ切り越しのボール投げ
ひとつの嘘から谷間が広がった
十月になれば全てが変わる
青空を見て胸いたむのは
大事なものを失った
心のすき間に青さがしみるから


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 87
#松本隆 #詩集
☆『わかれ道』
ひとつのさよならから明日(あした)がはじまるの
涙のひとつぶにも希望(のぞみ)はきらめくわ
せっかく友達になれたのに
今日からわかれ道歩くのね
ピアノを聞いたら想い出して
あなたに捧げた愛の詩(うた)を
ひとつの終止符から小鳥が翔びたつの
闇夜をくぐり抜けて朝陽がのぼるのよ
どこかの街角で出会ったら
やさしく声かけて下さいね
ピアノがあるから泣かないわ
新しい朝はそこまで来てる


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 83
#松本隆 #詩集
☆『ひぐらし』
ねえ私たち恋するのって
鞄ひとつでバスに乗ったの
マクドナルドのハンバーガーと
煙草はイブをポケットに入れ
御殿場までが矢のように過ぎ
緑の匂い胸にしみるわ
昔はカゴで通ったなんて
雪の白富士まるで絵のよう
読んだ漫画をあなたはふせて
内緒の声で耳打ちばなし
スーツを着てるあいつを見ろよ
三億円に似てないかって
最後に吸った煙草を消して
空の銀紙くしゃくしゃにした
窓に頬寄せ景色見てると
時の流れをただようようね
ガラスに映るあなたの寝顔
私はふっとため息ついた
生きてる事が空しいなんて
指先みつめ考えてたの
日暮れる頃に京都に着くわ
それは涯ないひぐらしの旅
あなたと二人季節の中を
愛はどこまで流れてゆくの


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 117
#松本隆 #詩集
☆『ねぇ……!』
だから Nenne おこらないで聞いてくれ
Nenne ぼくは片想いしてるのさ
だから Nenne ずっと大人の女さ
Nenne 泣いて やいているのかい」
ああ 哀しみに頬杖ついて彼が言う
猫でもいじめて笑う そんな瞳で
Nenne Nenne お前は Nenne
純粋な気持だけをもてあそぶ彼
さよなら好きな人 彼はやさしい
やさしさの裏側に ナイフがある
「だから Nenne 素顔のままでいいよ」
そんな嘘を信じたフール
ひとつ若さ はみだせないで
いつも愛に はぐれてばかり フーフーフー!
「だから Nenne 聞き訳の無い娘だね
Nenne 早く お家にお帰りよ
だから Nenne キスも下手なくせして
Nenne 口を尖らせるなよ」
ああ 人よりも冷たく彼は影を踏む
頭をこづいて 子供あやすよう
Nenne Nenne お前は Nenne
地下鉄の駅で 彼は闇に溶けるの
さよなら好きな人 今度逢う日は
魅きつけて 焦らさせて 振り向かせる
「だから Nenne ウブなままでいいんだ」
そんな言葉投げ返したい
ひとつ若さ はみだせないで
いつも愛に はぐれてばかり フーフーフー!


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 111
#松本隆 #詩集
☆『やさしさを下さい』
九月 早咲きのコスモス 予感……
この坂道から見える街が好き 淋しい時によく来るんです
夕焼け、葡萄酒色の雲が少しずつ蒼く蒼く透き徹ってゆきます
街に灯りがひとつふたつ 星の海のようにひろがるんです
あの小さく揺れてるのがあなたの家の灯りでしょうか
揺れてるのは涙のせいかもしれません
この間のちっちゃなけんか、やっぱり気になってるのかしら
あなたの愛を見失いそうなのに強がりばかりの私
淋しがりやのくせに……
もしこのまま逢えなくなったら… なんて考えてる内に
たくさんのたくさんの想いが風車のようにまわりだします
好きよ この言葉を何度心につぶやいたでしょう
「空に星が灯る頃、街にあかりが灯る頃
私の心にも小さな愛が灯ります
あなたのやさしさを私にください」
今夜手紙を書きます 電話だと声がふるえそうだし
手紙の方が気持を素直に書けそうだから……
この頃愛する難しさがわかってきたような気がします……
もう夜、とても静かです
眼をつぶると、あなたのほほえみが「元気だせっ」って言うんです
あなたの家の灯りにおやすみなさい
好きよ……


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 121
#松本隆 #詩集
☆『わかれの会話』
夕立ちの窓に頬寄せる
君はもう少女じゃないね
昔なら稲妻それは
ぼくの手に抱きついたのに
ひどいわ今も私の
くちびるはふるえているの
心の奥まで見透しそうな
あなたの瞳がとてもこわいのよ
あの頃の君はミニスカート
今よりも無邪気だったよ
亜麻色の髪にもパーマかければ
ほら色も褪せるさ
ひどいわ時が過ぎれば
人は皆変わるものだわ
ぜんまい仕掛の人形じゃない
涙も流すし胸も痛むもの
どう言えば君を傷つけず
この部屋を出てゆけるのか
お別れにくわえた煙草に
君の手で火をつけてくれ
ひどいわ愛の炎に
灯をともすマッチは無いの
あの日もこうして爪さきだって
くちづけしたのも遠い夢なのね
二人の間で小さく燃えた
心の炎をどうぞ消さないで


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 143
#松本隆 #詩集
☆『東京メルヘン』
もうじきに もうじきに春が来るんですね
もうじきに もうじきに春が来るんですね
あなたにとって私など
ただの心の道草でしょう
寒いポッケで二人の手
あたためたのもおとぎ噺ね
つめたい人ね くちづけてても
あー肩ごしに遠くを見てる
どこか渇いたあなたの胸を
涙でそっと濡らしましょうか
もうじきに もうじきに春が来るんですね
恋人たちの街角を
耳を押えてただすり抜ける
あなたの腕に抱かれてた
想い出だけにおびえる私
つめたい人ね サングラスへと
あー街翳を映したあなた
古いブーツを投げ出すように
私の心 捨てるのでしょう
つめたい人ね 冬のコートを
あー着せかける無口なあなた
見せかけだけの春が来たって
風が身体を吹き抜けるでしょう
もうじきに もうじきに春が来るんですね


ミチフミ龍之介
〜松本隆作品詩集 ♯ 79
#松本隆 #詩集
☆『夕焼け』
あなたに逢えた まぶしい夏が
目に浮かぶ夕焼け
陽に灼けた やさしい顔が
「元気だせ」って叱ってくれる
泣いてはいけませんか 一人で
あなたがとっても好きだから
青い波 はしゃいだ手に
もう一度ふれたいの
真夏が過ぎた海辺の駅で
別れたの あなたと
結んでた指も離れて
汽車は秋へと走り出したの
泣き虫 そうよ私 あれから
逢いたい逢えないあなたなの
街角でよく似た人
逢えば心さわぐの
泣き虫 そうよ私 あれから
素肌の夏さえうすれても
この胸に消えないのよ
あなたの愛の炎

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