まあ、これは私の持論だが。この世界に『生きている』と確信を持って言える存在というのは、ただ一つ、私だけだ。他は、もしかしたら私が作り出した幻想なのかもしれない。『こんな人が居たら、人生が豊かになる』だとか、『こう言ってくれたら、成長に繋がる』だとか、そんなことを考えているから、その人が存在して、そう言うのかもしれない。これは、私がもし死んだら、と考えていた時に思いついたことだ。だから、私が死んだらこの世界は、まさしくシャボン玉のように儚くなくなってしまうのではないか。そう思うのだ。それはなんとも申し訳ない。私の妄想の中では、みんなは『生きている』のだ。ただすれ違っただけの人の人生を、無駄にしてあげたくはない。だから、私は死のうとするのを諦めた。ただのお人好しだ。…と、こんなに偉そうに言っているが、私は別に賢い訳では無い。なんなら、そこら辺の人よりも馬鹿なくらいだ。中学校すらまともに行っていないような人間がこんなことを、自分がこの世界の主人公であるかのようなことを、言える立場ではない。…そう考えたら、どうでもよくなった。言ってしまえば、みんな魂のないお人形さんだ。私がすれ違った何万人も、存在してるかも知らない何十億人も全部、私以外は人形なのだ。ならば、私が死んでも何万、何十億の人形がなくなるだけではないか。さらに、もしこの説が間違っていたとしても、存在している何十億人が死なずに生きていくだけだ。…私が死んでも、なにも悪いことはないではないか。こんな事を考えていると、より深く考えたくなってくるのが人間だ。私は、神は存在すると思っている。それがどんな神かなんざは知りもしないが、その世界の『運命』を操る、彼彼女、もしくは彼ら彼女らは存在するだろう。またしても私の持論だが、この世界の筋書きは決まっているのだと思う。
『ね、キミ』みなみが男の子ーーーーやまとくんに声を掛ける。『…なんだ』やまとくんは不機嫌そうに答える。…これ、ファーストコンタクト間違えちゃったんじゃないかなぁ…大丈夫かなぁ…『キミ、健速やまと君であってる?』『だからなんだよ、オレは今から入学式サボるところだから話しかけんな』やまとくんは非常に不愉快と言った顔でその場を離れようとする。あちゃー…頑張って、みなみ!僕の想いが届いたのか、みなみはやまとくんの袖を引っ張り、なんとか引き止めてくれる。『あぁっ、待って待って、サボるならなお好都合だよ!時間あるでしょ?ちょっとあたしの話に付き合ってほしいの!』あー、みなみ…それだとただの怪しい人だよ…『話しかけんなっつったろ』あー…完全に怪しまれちゃってる…『ほ、ほら、パフェ!パフェおごるからさ!お願い…!』『…』…ん?なんかやまとくん、揺らいでない…?やまとくんって甘党だったの?知らなかったんだけど…『………』ご、ごくり…『…ごくり…』『…本当か?嘘ついたら容赦しねぇぞ』な、なんと…まさか、それでいけるとは…さすが、僕のみなみだな。
「…カモノハシ?」「そう、カモノハシ!」学校帰り、いつも通りアオくんのところまで行ったあたしを見て、案の定アオくんは変な声を出す。「????????」自信満々なあたしを見て、アオくんはフリーズしたようだ。「おっ、あかねちゃんじゃーんやっほー…って、なにそれ?カモノハシ?」奥の部屋からタイミングよく安曇さんが顔を出す。「あ、安曇さん!そうですカモノハシ!かわいいでしょ〜!」「すっげぇかわいい!でも、どうやって…?」と、ここでアオくんもようやく我に返ったようで、「そ、そうだ、どうやって持ってきたんだ?」「ふっふっふ…実は、学校で近くのゲーセンの無料券をもらったの!友達から貰ったりして、5枚使ってやっと取れたんだぁ〜感謝感謝だよ〜」カモノハシのBIGぬいぐるみを抱えてほっぺをすりすりする。「…ほっ…なんだ、あかねが学校に財布を持っていくような不良になってなくてよかった…」「あはは、アオくん、そんな心配してたの?っていうか、ここに顔出してる時点でだいぶ不良でしょ〜」「ま、ここは広〜く言えば『同級生の家』で片付くからねぇ。ま、学校帰りの寄り道は危ないから基本ダメなんだろうけど」「あ、あはは…それは、ちょっと知らなかったってことで…」と、私は言いたかったことを思い出す。「これ、アオくんにあげるよ!でかいしふわふわだし、仮眠用の枕にいいかなって思って!」「お、マジか?普通に助かるわ、ありがとな、あかね」………………っっっっっ!!!!!!!!「………あーあ、かいちょーがまたあかねちゃんを落とした〜」
「…なぁあかね」「…?なんですか?」二者面談の終わり際、暗木先生がなんだかへんちくりんな顔であたしに呼びかける。「お前、アニキいるか?」「…?いますけど…って、家族構成とか書いてる書類、提出しましたよね?」「…そうだよなぁ…もしかして、お前のアニキの名前って、やまとだったりする?」「…?!なんで知ってるんですか?!」「おぉ、やっぱそうか。実は俺、やまとの担任だったんだよ」「ふぇぇ!?そうだったんですか!?…って、じゃあ先生っていくつなんですか?あたし、お兄ちゃんと結構離れてますよ?」「おいおい、こんなに可愛いレディに年齢なんて聞くんじゃねぇよ、失礼だろ?」「微塵も自分のこと可愛いとかレディとか思ってないくせに…」「おーおー、言うじゃねぇか。ま、どっちにしろ年齢は内緒な。普通にコンプレックス」「はぁーい」「ってことで、アニキによろしくな。俺のこと覚えてるか知らねぇけど」「お兄ちゃん記憶力いいんで大丈夫ですよ。また伝えときますね」「おーう、頼んだ」
「おぉっ、すげぇ似合ってる!かわいいよ、初歌」「…恥ずかしいです。あんまり褒めないでくださいよ」「そう言わずにさぁ〜ほら、はいチーズ」パシャ「きゃっ」突然写真を撮られ、変な声が出る。「そういう祢音さんこそ、なかなか似合ってるじゃないですか。さすが私のセンスですね」お互いがお互いに向けて贈った浴衣を見せ合う。なぜ浴衣なのかというと…「よぉーし、人生初の夏祭り、楽しむぞぉぉっ!」「…最近祢音さんどんどんキャラ崩壊してません…?」心を開いてくれたということにしておこうか。「というか、2人とも人生初って、なかなか珍しいんじゃないですか?私は置いといて、祢音さんは、すごいそういうのエンジョイしそうですし」「妹があんまり行きたがらなかったからな。必然的に俺も行かなかったってわけだ」「あーなるほど…じゃあ、今日は昔遊べなかった分、楽しみましょうね!」「がふっ」なにやらダメージを受けているが、楽しそうで何よりだ。「すごく、楽しみです」
さて、ここで少し話を変えよう。よく、テレビなんかで「SNSで知り合った人に簡単に会ってはいけない」と聞く。理由は様々だが、簡単に言えば『危ないから』だろう。『SNSで出会った人に誘拐され、そのまま殺害された』こんなニュースを聞くことも、別に少なくはない。誰も、命を無駄にはしたくないだろう。テレビや学校でもよく忠告されるわけだ。
「ねー、アオくんー」ソファに寝っ転がり、ゲームをしながら話しかける。「なんだ?」「もうちょっとで中間テストじゃん?勉強した?」「…知らなかったことにしていいか?」「だめに決まってるでしょ!やっぱり、勉強してないんだね!…まぁ、忙しいのもわかるけど、勉強は学生の本領だよ?もうすぐ受験だってあるのに…」「あー!もうやめてくれ!勉強できるタイミングあったらするから!」「…ほんとに?」「…………あぁ、ほんとだ」なんか可愛いなぁと思いながらアオ君を見つめていると、「こんちゃ~す…って、あかねさんも居たんですか、おつかれさまっす」「あっ、羽白さん。お疲れ様です」「おー、いいところに来たな羽白ぉ。ほら、お前が大好きなオレ様からのありがたーいプレゼントだぞぉ」「うっげ…嫌な予感しかしないんすけど…って」「オレは散歩してくる。行くぞ、あかね」「えぇっ、この量を一人でしろってことっすか!?…はぁ、しょうがないですねやってやりますよ…」「羽白さん、ご愁傷さまです…頑張ってくださいね」「感謝っす…2人とも、気をつけて行ってきてくださいね」
「おや、君は少し勘違いしているようだね。僕は言ったはずだよ、『君に興味はない』、とね。僕は君に向けて話しているわけじゃないよ。今も、ね。僕はそう、小説の登場人物の一人だ。僕が話しかけているのは、今目の前にいる…そうだな、女の子だ。年は…大学生ってことにしようか。そもそも、これはセリフだろう?このカギ括弧が見えなかったのかい?…なんてね。いいさ。ほら、『君』もそんな顔しないで。『君』はこれから、運命の人に出会うだろうさ。名前はそうだな…やまと。そう、やまとだ。健速やまと。そして『君』の名前は天照こころ。そういうことにしよう。『君』は3年後、彼と運命的な再会を果たすだろう。それを棒に振るかどうかは『君』次第さ。だから、これは君に話しているわけじゃないんだよ、A star that has lost its lightくん」