応仁の乱を中心に、室町時代から戦国時代までの面白さをアピールする本。ページの大部分を占める作家と専門家との対談は非常に面白い。ただ、室町から応仁の乱へと続く歴史的な流れは、あんまり頭に入ってこない。登場人物が多く細かいイベントが多い割に面白エピソード、面白キャラが少ないせいか。京都人口流入、格差社会、権力の分散、文化の爆発など混沌とした背景が令和の日本と類似してるとのこと。なるほど、このままいくと東京が焼け野原になる可能性もあるのか・・・。室町時代に多少興味が出る本です。#読書
今や日本の大学進学率は6割にのぼる。個人の事情にもよるだろうが、希望すれば大学進学はできるということ。ただ入学して卒業しただけでは意味がなく、どう過ごしてきたかが問われる時代であり、そのヒントについて書かれている。大まかに言うと、経験のした事の無いアウェイの世界に飛び込めば、刺激を受け、広い視野、知識、知恵を身につけ、成長できる。早い段階で教員と交流すれば、ヒントを貰いやすくなり、広く深く学ぶことが出来る。大学は多種多様な人がいて、それを活用できる場。せっかくのチャンス、積極的に活動しましょう、という話。#読書
中国は国土がめちゃくちゃ広くて、人口も多い、一言で性質を語ることは難しい。中国の縁のある13人がそれぞれの目線で紡いだエッセイ。音楽、美術、映画、SNS、食物、ビール・・・。庶民的な生活から、アングラな文化、伝統と前衛、ごちゃまぜな中国の空気を感じることができる。もちろんほんの一部分。政治や経済や歴史などを絡めるとややこしい関係だが、生活圏を共にする隣人と思えば、個性ある面白い友人、せめて知人ぐらいの感じで見れるような気がします。#読書
本庁から出張所に異動となった市役所の職人の仕事は、100mの観音像が傾いているかどうかを確認するというもの。変な設定。震災から8年経過した東北のある市(仙台大観音が元ネタ)で、傾きを押し返す運動をする町内会の面々、市役所職人たち、設計に携わった人との交流、そしてたまに挿入される観音様のモノローグな1人語り、と変な展開。傾くきっかけになった出来事や、そう見える地元民の観音様に対する思いとかが、震災越しに見てみると、変だった世界観が切なく良い話に転換する。手に取りにくく読み始めにくいが、完読すると癒されます。#読書
同じ界隈で生活する人達の4編の連作。フィットネス系インフルエンサー、元文芸誌、今インフルエンサー担当の編集者、マイナーな番組制作会社の契約社員、Kポップアイドルを目指したことのある塾事務員。インターネットやSNSを利用しながらも、結果振り回され、炎上騒動に巻き込まれる、もはや現代における病巣の破片のような物語。情報社会は便利で自由で無敵感溢れる、窮屈で大人にならないといけない社会。扱い方は本当に難しい。#読書
題名の通り、日本の現行法律の面白そうなのをピックアップし、弁護士先生がユーモラスに掘り下げたもの。「ラクダ、そり、ベビーカー。この中で飲酒運転になるのは?」「スーパー銭湯は高いのに、近所の銭湯はなせ格安?」「ライブハウスは実質、居酒屋?」「宅配便に入れたその手紙、違法です」というような(目次から抜粋)。生活に役立つような内容ではないけど、へぇー、やら変なの、やら、法律に関心を持つキッカケになるかも、ならんかも。#読書
スポーツ現場が叱る指導や体罰になりやすいのは、権力格差が明確で密室性が高いから。頭で理解していてもついつい叱ってしまう。それは、人間に処罰欲求というものがあり、また短期的には効果があることもあるから。叱ることを意志で我慢するのでなく、叱ることがしづらい仕組みを作ることが肝心とのこと。方法についてはいくつか挙げられているので、試してみる価値あり。懲罰は一時的、短期的な効果は無くはないものの、長期的にはマイナス面が多い。選択の権利を当人に委ね、待つことが指導者には必要。スポーツの世界に限らない対人関係の話。#読書
簡単に言えばSNS依存症、もはや中毒の域にいる女性目線の小説。主人公に共感できる人がどれだけいるかはわからないが、現象として似たような人が居はそうな気がします。自意識と承認欲求にまみれ、そこからの解放を望むも執着から逃れられない。インターネットとSNSというツールのお陰で、色濃く表れた人間の性という気がします。#読書
1971年生まれの筆者が残りの人生をどう過ごすか、現状把握から情報収集を通じてシミュレートする過程をエッセイとして書き連ねたもの。平均寿命で80~90、下手したら100歳まで生き続けるかもしれない現在、老後を幸せに過ごせることができるか。難しい問題が山積みで八方塞がり。今後どんな社会になるか予測が難しいが、情報を得る力と、最低限のコミュケーションを取れる力があれば、選択肢の幅が広がる。42歳の無職で身内のない独身者の死体が1年以上放置されたニュースが今日あった。情報弱者、コミュ障の行く末を見た気がする。#読書
性被害者は女性が多い。そして年齢を下げていくと、女子だけではなく、男子の被害者も多くなる。さらに加害者は圧倒的に男性が多い。結局、強い者が弱い者を虐げているということ。強い側の人間(男性的人間)が、弱肉強食、自己責任論を押し付けてきた結果なんだと思う。力のある立場の人間が力を振りかざすことのみっともなさ、弱い立場の人間を守ることのカッコ良さを植え付けて行くしかない。それが出来ない人間は消えていい。#読書
血の繋がらない女性と2人で暮らす高校1年生は、初恋の相手が中学時代の男性教師で、ちょっと女の子ぽい思考と仕草の男子。その彼が転校して出会った同級生の男子との恋愛物語が主軸。章ごとに語り部が変わる。主人公男子、義理の母、主人公の彼氏、BL好きの地味なオタク同級生女子、家出した主人公の父。最初セピア色だった景色が、それぞれの言葉を聞き、気持ちを知ることで、少しずつ色が着いていくような感覚。要領良く生きているように見えている人も、生きづらく見える人も、それぞれ悩み一生懸命生きている、それを改めて感じました。#読書
実在した1人の海賊船長に焦点を当てた著書。彼が活躍したのは1720年前後の4年間、齢40、拿捕した船の数約400。彼らの日常は、商船、城砦、港を襲い、食料、酒、金目のもの、砲台、火薬、武器、奴隷、船を奪い、宴会。奪った船が高性能なら乗り換え、他の船は焼いたり、逃がしたり、優秀な船乗りをスカウトし、逃亡者には容赦がない。最後に捕らえられた160余人の内処刑者52人。裁判で、無理矢理海賊にされたことが証明できれば無罪放免とか。商船乗りは労働条件が悪いので、簡単に海賊に寝返るらしい。結局死ぬのだが。#読書
脊髄の病気が原因で中学時代に足が不自由になり車椅子生活になった女子と、中学時代の怪我で厭世的になった元陸上短距離記録保持者の男子との高校恋愛小説、という既視感ある設定ではあるが、主軸はもっと深い人間の本質的なところ。障がい者と健常者という単純な対角構造でないところが良い。個性とは何か、差別とは何かということを議論する高校生たちの言葉と先生が語る大人の事情。戦前戦後で価値観を反転させた国、首相が変わっただけでベクトルが大きく傾いていく国・・・、自分の頭で考え、自分で判断する力がますます必要になってきます。#読書
ドラマ先行で見たため、登場人物のキャライメージはそれに引っ張られ気味。設定が微妙に違うことを知る。1995年の渋谷を舞台に若者たちが走り回る物語。当時は、鬱屈とした空気と、世紀末的な破壊的雰囲気が漂う中、人々はどこか刹那的にハッピーを演じていたような気がします。まだ失われた〇〇年と言われる寸前の最後の花火。ダサい大人にもなれなかったロスジェネの残骸が、今や社会問題となっているのは、悲しい結末なのか、まだ続く物語の途中なのか・・・。#読書
父は伯父の胎児内胎児として生まれ、私は1つの身体に2つの意思を持つ結合双生児として生まれる。普通に〈単性児〉として生まれた人には分からない感覚、意識を小説としてリアリティに描く。非常に希少な存在で突出したマイノリティとして生きているはずが、そうは感じさせない前向きな自然さを感じる。朝比奈さんしか書けない小説。#読書
眼科で検査と訓練を担当する視能訓練士の新人くんを主役にした小説。研修医のドラマに近い展開だが、眼の病気に絞られている。登場人物は良い人揃いなので、ストレスなく読めます。眼は痛みを感じにくく、悪化しても自覚しづらく、一度悪くなると元に戻すのは難しい。半日中使用し、命に関わりにくいゆえ雑に扱っているが、大切な器官のひとつ。定期検診を。#読書
偏西風を利用して、日本からアメリカ本土まで焼夷爆弾を付けた気球を飛ばし攻撃する作戦が太平洋戦争で行われた。その風船を生産した拠点の一つ東京宝塚劇場を中心に戦時中から今を描く。主役は1人ではなく、当時の女学生のわたしであり、あなた。当人に体験談や証言を聞き取りしたり、当時の文書から引用したりと、生の声が元になっている。感情移入はしづらい文体だが、それゆえ客観的な視点で読める。国家対国家の戦争でも、そこには必ず慎ましく普通に生活している人たちがいる。勝っても負けても、戦争で失った時間は二度と戻らない。#読書
主人公ホールデンは病院で療養中であり、半年前学校から逃亡した日のことを語るという内容。当時のスラングぽい言い回しもありそうで、原作を読みたくなります。なぜ入院しているのかは大体想像できるのだが、断定はされていない。全然違う理由を仮定して物語を振り返ると、また違った印象になる。実は病院じゃないのかもしれません・・・。#読書
男女に本当に性差があるのか。結論としては、先天的にはほとんど性差がなく、性ホルモンの要因の可能性もあるとしながらも、親の関わり方、社会の要望などの影響を受け、性差が作られていく、とのこと。とはいえ、空間認知は男子が、言語能力は女子が、攻撃性は男子が、学力は女子が強い傾向があるとのデータもあり、生物的性差も無くはない、ともいえる。いずれにせよ、生まれた瞬間に決められるより、可能性を大きく持ちたいので、自助努力で人生はどうとでもなるという考え方に一票を入れたい。#読書
アラフィフ女子を主人公にした4つの物語。第一章 五十三歳で専業主婦をクビになる 第二章 五十一歳でこれまでの働きぶりを全否定される 第三章 四十六歳で教え子の選手に逃げられる 第四章 五十二歳で収入がゼロになる と、シニアになって急に突きつけられる困難。腐らずに一生懸命前向きに進んでたら、どんどん良い方向に。結果的にリベンジも果たせて、ハッピーエンドという展開。モヤモヤがスカッとする小説でした。#読書
貫井亀夫が飼っていた、変な顔の変な体格の犬を、ペットの買えないマンションでこっそり匿うことになった男。犬との出会いから別れまでの数週間を描いた、と書くとハートフルそうに見えるが、全然そうでは無い、芥川賞作家のデビュー作。#読書
2025年問題、2040年問題と、ますます高齢化社会へ進んでいくなかで、今高齢者(80代~100才)に起きている問題の一つを取り上げる。施設に入って介護を受ける、子供と同居し、生活の支援をしてもらう、などが一般的な高齢者のイメージだが、今は夫婦2人暮らしで自力で生活する高齢者が増えているそう。子供が居て、頼ることが可能でもあっても、である。一人暮らしの高齢者なら早めに支援を求めても、2人だからこそ、その選択肢を選びにくいそうです。気づいた時には・・・。ちなみにここには解決策は書かれていませんでした。#読書
36人が殺害され、32人に重軽傷を負わせた戦後最悪の事件「京都アニメーション放火殺人事件」のルポルタージュ。青葉死刑囚の生い立ち、裁判での言動、遺族、負傷者の思いなど、被告が生かされたことで裁判で可視化された事件。最終章で複数の評者が事件の社会的背景を分析しているが、結果としての事件は特異でも、原因は潜在していた数多くの火種の一つ。結果が出せないのは個人の努力、根性が足りないと責められ、弱音を吐けずに底辺を生き続けてきた多くのロスジェネが、不安な老後を迎えます。無敵の人の自爆は他人事ではない気がします。#読書
2023年5月からの半年、能登半島にある病院の緩和ケア科で研修することになった女性看護師が主人公。5章それぞれ、1人の末期癌患者の最期に寄り添うストーリー。緩和ケアの目的、選択の判断など医学的な見解もありながら、また残される家族や友人との関係についてもリアルに描かれる。1人1回は必ず訪れる死だが、その死に方を選べる時代になったことで、能動的に向き合うことが必要なのかも。初体験でベストな選択が出来るよう、事前に勉強しておきましょう。#読書
人間の記憶力は必要なのか不要なのか? 知識の類は大抵ネット上ですぐ手に入り、最新の情報にアクセスできる。AIの進化も目まぐるしく、人間の脳の代替品としての機能が充実してきている。結論から言うと、単純なメモリーとしての機能としてはAIの方が遥かに優れている。ただ人間の判断力は、記憶の中に無数に散らばる断片を無意識的に呼び出し、選択することに使う。絶対では無い曖昧であるからこそ出来る人間のひらめきは、記憶の中から生まれる、というような話。全般的に記憶の仕組みや記憶の方法など、テクニックに近い内容が多かったかな#読書
1975年石川県生まれ、信州大学卒業の精神科医が、この半世紀を5つのテーマごとに時系列的に辿ったもの。①社会:地方からみた高度経済成長~割と一般的な社会史②経済:バブル~就職氷河期と経済の停滞を自己責任として個人に押し付けた③オタク:ゲームをメインとしたサブカル④精神医療:ちょっと変わった個性が発達障害、精神疾患とするようになった功罪⑤ネット:PC、インターネット、AIを通じて対人コミュニティの変遷⑥現代思想:真実と嘘が曖昧な時代に専門的でマニアックで難しい面もあるが、深堀りの仕方は面白い。#読書
脳内科医の先生が脳科学の見地から老害について書いた本。自分の価値観を必要以上に押付け、マウントを取り、昔話や説教をすることなどを老害と言う。年齢関係なく似た行為をする人もいるが、歳を重ねるごとに、発揮しやすくなる。その仕組みを説明してくれるが、脳機能の低下、老化が大きな原因で、認知症との関連もあるとのこと。誰しも老害になる可能性がある(むしろならない方が珍しいかも)。そのことを自覚して、普段の自分の行為を内省しつつ、老化防止に努めることが重要。みなさん、好奇心をもって刺激を求めた活動を。高齢化社会ゆえに。#読書
続編。相変わらずのどかな雰囲気を纏った小説だが、仕掛けがミステリー並に散りばめられていて、密かに緊張感を持ちながら読みました。結局、無駄な緊張感でしたが。まだまだ伏線が残っている気がして、続編があれば、また改めて回収してくれるのかも。猫娘?#読書