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くまきち

くまきち

くまきちです
学生
散歩
モンハンライズサンブレイク
くまきち

くまきち

「エスメラルダ」

もしも 運命的な美しさが
あるのだとしたら

あえやかな この背中の
ちいさな 骨のひとすじの
ま白さの なんと おぞましいこと

そうだ いのちは おぞましい
まばらにひかる この 忌々しい
ちかちかとした いのちが燃えて
熱くほほえむ あなたを 見た

点が 線になる
ひとりが ふたりになる
絶え間なく 続く いのちの
なんという おぞましさ
まだ 終わらないのか
ともしびは まだまだ 消えないのか

鼓動が いのちを 引き連れる
血液が たましいを 満たしていく
空気が 細胞を 包んでいく
からだが 溶けていく のだ
そうか いのちは からだを溶かすのか

夜が明けるのは 火が消えてからと
知ったように 言う
あなたは 唇を向けた
深緑の眼は 濁るほどの いのちだ
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くまきち

くまきち

「エピローグ」

どうして みんな大人になっちゃうんですか
うまく 生きていこうと するんですか
苦しいのに 愛してるんですか
楽しいだけじゃ だめなんですか
そうですか

本当に 進まなくちゃだめですか
知らないままで いちゃだめですか
明日なんて いらないんじゃないんですか
ずっと今日で いいじゃないですか

本当のことを話すと
どうしてか 涙が出ちゃうんですよ
言葉にすると 痛いんですよ
喉をつっかえて 傷がつくんです

誰でも 変わっちゃうんですか
わたしも 変わっちゃうんですか
どうして 受け入れちゃうんですか
変わっちゃったら 悲しいじゃないですか

人はひとりじゃ ないんですか
あなたに わたしが分かりますか?
わたしのこと ちゃんと見えてますか?
知ろうとしてくれて いますか?
わたしのこと いつか
好きになってくれますか
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くまきち

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「レイン」

どこまでも 落ちていくのなら
行きつくところは おなじか

しろい雲から 抜け出して
暗い風に またがり
あなたの頬を すっと たどり
草花に 垂れていく
柔土に じわりと 染みる

幾億もの 旅路のなか
わたしは 幾度も 知っていくのだ

あなたの頬の あたたかさ
わたしの粒の その 冷たさを

流れていって しまうこと
あなたは わたしを 知らぬこと

どこまでも 落ちていくのなら
諦めるほか ないか

あなたに 触れる
あたたかな
僅かな間を なぐさめにして

わたしは ふたたび
流れ着く のだ
どこまでも 落ちる
いつまでも 落ちゆく
終わることなく 流れていく
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くまきち

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「夜を飛んだカラス」

夜を超えて 空を変えて
雲と飛んで いた
本当も 知らず
嘘も 知らず
その身 沈む まま

羽は飛んで 風に乗って
ずっと遠く まで
一羽で 飛んで
夜霧を 突いて
影も 見えぬ まま

昨日を吐いて 言葉を吐いて
はるか彼方へ 行け
木々を 縫って 
月夜を 飛んで
翼を 裂いて ただ

黒い その眼
夜に 沈め
空を 飛んだ まま
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「ルピナス」

青い毛皮に 透き通る
月光はただ 揺れるのみ

わたしの神が 吠えていた
こころのままに 吠えていた

夜を駆け抜け 喰らいつく
わたしは言葉の 牙を持ち

素知らぬままに 噛みついた
白い牝鹿の 柔肌に

ついた歯形は あつく燃え
いのちは跳ねた さめざめと

こころに浮かぶ 迷いなど
吠えて 喰らって 飲み込めば
わたしはどこでも 行けるのか

あなたの元さえ 行けるのか

月光はただ 揺れるのみ
こころのままに 揺れるのみ
天は大地に つかぬもの
それを知ってか 知らずにか

わたしは吠えた さめざめと
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くまきち

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「流星になれるか」

煩わしい 冷たいからだも
鉄のかおりのする こころも
はなをつく 思い出も

落ちていくなら めざましく
あたたかい 瞳だけで
空に 沈む

火を灯した炉の 侵しがたい
あの 熱量のような
一条の いのちとなって

だれかの まただれかの
願いを 乗せて
あたたかい 瞳だけで

わずかな とてもわずかな
いのちを 乗せて
わたしの すべてを見にいくのだ
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【群青四詩】

「冬すずめ」

冬はすべてを 喰らい尽くす
そうだ
あの時も
そうだった

ぼくは凍えた こころを
ふるえた 羽根のような
小さなもので 慰める

ひとりで ひとりで 世界のさなか
足元までも 凍てついた

雪をまとう エリカの花が
静寂 あの夜みたいに
ずっと遠くで 咲いていた

しろい しろい 世界のさなか
ぼくは変わらず 息をしている
息をしている
息をしている だけだろ

吐き出した 暖かさを
思い出して 引きずって
賢しらげに 感傷して
変わっていないだろ
なにも
変わらないんだよ

ぼくは眠った
春になったら 目を覚ますのだ
いまは さむいから
悲しい気持ちになるんだ

溶けろ いつか
身をうずむ 弱さも
凍えなくて いいように
言葉よ
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くまきち

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【群青四詩】

「夏よかれ」

かつての夏々で 残されたものは
どうも思い出だけでは ないらしい

ぼくは いまだ
濡れすさんだ 青髪の
みずけを タオルで包み込む

夏は 夜がふけたとしても
命の音を 途切らせることはない
やり残すことが ないように
だから 必死に 生きるのか

やりたいことを しないのなら
少なくとも ここでは
生きてないのと おなじだ

もうじき ぼくも変わる
スミレの蕾が 青い五弁の眼が
ぼくの未来を見た
ぼくの未来を見た
もうすぐ もうすぐだった

乾かぬままに 生きていたって
枯れてしまっては どうしようもない

ぼくは濡れた目で 月を見た
冴え渡るほどの 青色
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くまきち

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【群青四詩】

「春いろは」

はじまりみたいな顔をした
この季節が 憎らしかった

やわらかい風に あてられて
心臓にまで 花が咲いたようで
芽吹いたその命に 胸が焼けた

なびいた桜色は 艶やかで
どうしてもそれに 目を奪われて
ああ もう
ぼくは 春に染まっているのか

忘れてはならない 冷たさを
忘れろと 言うのか

散りゆく 花びらが
足元に落ちる

なにか 少しでも変われるように
わずかにでも 願っているのか

視界が ぼやける
風が吹く
風が吹く

春の色は 憎らしくも
ぼくの景色を やさしく撫でていた
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くまきち

くまきち

「指を結ぶ」

わたし
約束をするために 生まれてきたの
一度きりでいいから 指を結んで
守ってくれなくても いいの
また会おうって 嘘でもいいから

あなたの 人生のうちの
ちいさなちいさな ひとつの
どうしようもないものを
わたしは 抱きしめて

枯れた月の わずかな黄金に
見えた 果てしないゆめに
わたしは 人生のながさを知る

あのとき 結んだ指は
終わらない 夜を越え
それでも あたたかいのね

あなた あなた
嘘つきな
夜って やさしいの?
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くまきち

くまきち

「人間やめてみた」

毎日毎日馬鹿みたいに働いて
嫌になったので人間をやめてみた

大きな怪獣になってみた
なにか大きな 悲しいものを
この手で 壊してしまいたくて

暗い夜風になってみた
涙を流す 誰かの頬を
すっと 通り抜けてみたくて

眠る子猫になってみた
なにも 思わずとも
誰かに 愛されてみたくて

幼い子供になってみた
嫌なことでも うまくいかないことでも
なんでもいいから ただ泣いていたくて

そんな
馬鹿みたいな 妄想を
そっと あなたに話してみた
あなたに少しだけ 知っていて欲しくて
できればあなたのことも 少しだけ知りたくて

あなたは笑って 馬鹿みたいって言って
思うままに 生きたらいいよって
そうして ぼくに ハグをした

そこには なにかのぼくじゃなくて
幼くなった ぼくがいた

今だけ ここだけ 今日だけは
あなたの腕の中で
ぼくは 人間をやめた
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くまきち

くまきち

「過去は死ぬのか」

ひとりで眠る
白い 心臓
星が ぱちぱち 輝いた

くすんだ髪が 目にかかる
見えないなにかが 道を塞ぐ

わたしは 一つも変わらないまま
とおくの過去に まどろんだ

ひとりで死んだ
白い ざわめき
月も 誰もが 知らんぷり

誰かこころを 知らないか
わたしが 落としてしまった ものだ

時間はひとつも 歪まないまま
世界を愛して いるのでした

こころが死んだ あの頃の
白い 白い 桜が
あざやかに
静かに 散っていく
その音が わたしには
たしかに聞こえて いたのでした
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くまきち

くまきち

「バグ」

なにも信ぜずとも あなたに会えました
玻璃の目の 盲目の神さま
爪の先まで あなたは完璧であったのですね

この世でも あらゆる歪みが許されぬのです
しかし罪もけがれも 無情に平らげました
膨れ上がった腹に 意味を見出せぬまま
汚れた指で またなにかを食うのです

だから
女神さま キスをください
この世から 戦争をなくそうとして
まもなく死んだ あの子供たちのように
なにも考えず そっと どうか
誰にも 言わないですから

あやふやな理想の 生ぬるい羊水で
すべてを包んで 育んで
そうして わたしを完璧にしてください

女神さま あなたは爪の先まで
完璧でありました
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くまきち

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「夜道」

訳がわからなくなったら 夜道を歩く
夜は嘘のようで 何よりも現実だった
誰もがここではない どこかを目指して歩く
ここではない どこかへ
確かな足取りで 歩いていく

夜闇を辿る
道を 縫うように歩く
あてもなく 引きずられるように歩く
こころの中に いる
悲しいなにかに 急かされて 
ひとりの海を 泳ぐように
母親の手の温もりを 探すように
戻れない場所へ 戻ろうとするように
ただ 夜闇を歩く

星が見えない この街も
夜は変わらず ひっそりとある
わたしが知らない 知らない ことも
きっとただ 見えないだけ なんだろう

冷えた空気が たちこめる
そこには 辿り着けないほどの
広い 広い 夜があった
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くまきち

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「不可視」

哲学は最終的に 不可視である

見えないもの
知らないことを
死ぬまで
天国まで
じっと 持っていかなくちゃいけない

それは祈りだ
わたしでは どうすることもできないから
答えが現れてくれるのを
ずっと 待っていなくちゃいけない

ひとりで ひとりで この街で
いつまでも 年老いるまで
まだかと 心を細めて
命の わけも知らず
何も知らず

会いたい 会いたいなあ
あの日の 僕ら
美しいあなたの指先が見たかった
空も 泣くのだなあ
夕焼けはいつまでも 綺麗だった
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くまきち

くまきち

本日で100作目に到達いたしました
いつも見守り、応援してくださる皆さまに、心より感謝申し上げます

これからも黙々と書き続けます
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「スノウ・ホワイト」

雪は あざむく
この夜の うすいけがれを
白は 掻き消す
生きること 死ぬこと
その汚さを

どうしようもない 小さな孤独が
しとしと しとしと 降り積もる
この白い手の 僅かな熱すら
地面に 積もる

叶うなら この命まるごと
その白さで 覆ってくれたら
ぼくは 誰かが落とした
あたたかさを そうっと食って
生きていけるのに
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くまきち

くまきち

「日常になる」

あらゆる刺激も 悲しい真実も
時が積み重なって いつかは日常になる

わたしたちが 終わりに向かっていること
それ自体を ふっと忘れてしまうように

肌を焼いた 斜陽の
あたたかさに 目を細めるように

僕らは 積み重ねた分だけ
少しだけ 強くなる
少しだけ 優しくなる
ほんの少しだけ 分からなくなる

この苦しさに 押し潰される
誰かの 気持ちが
分からなくなる

あなたの苦しみも 精一杯考えないと
きっとひとつも 共感できなくなる
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くまきち

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「第n次創世記」

あらゆる残虐さに 理由はあるのか
なぜ お前は食べる
わたしは
山に住む 石のような男に聞いた

男は獣の皮を剥ぎながら 答えた
それはもちろん 生きるため
食わねば 死ぬのだから 食うしかない

そうかそうか お前は
必ず奪うように 生まれてきたのか
そう言ったあと
わたしは 男のあばら骨を一本抜き取り
颯爽と 持ち去った

次に わたしは 海へ行き
水のような 女達に聞いた
なぜ 病弱を嫌うのか

女達は腐った実を摘み取りながら 答えた
病弱は いづれ感染るのです
みなが病に伏せれば すべて死んでしまいます
仕方のない ことなのです

そうかそうか お前は
必ず捨てるように 生まれてきたのか
そう言ったあと
わたしは 女達のいる海に
腐った実を 投げ入れた

そうして 波が起こった
山は砕け散り 海は荒れた
多くのものが ゆらめき
奪われたものごと 捨てられたものごと
すべてが岩石と波に 平らげられた

わたしは そのすべてを見届けると 
落ちていた 一際大きな腐った実に
ぐっと あばら骨を突き刺した
骨と実は よく絡まり
極めて僅かに 脈を打った

それからは ずっとずっと長い間
骨と実の隣に 座り
父の光と 母の足場を 死ぬまで受け続けた
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くまきち

くまきち

「知らない 知らない街」

知らない 知らない 知らない 街で
知らない 知らない わたしは たたずむ

知らない 知らない 知らない 花を
知らない 知らない 風が 揺らした

知らない 知らない 知らない 場所へ
知らない 知らない くるまは 向かった

知らない 知らない 知らない 夜を
知らない 知らない 朝は 灼いた

知らない 知らない 知らない 誰かが
知らない 知らない あいを いだいた

知らない 知らない 知らない 誰かを
知らない 知らない わたしは だくのか

知らない 知らない 知らない 明日を
知らない 知らない わたしは 知らない

知らない 知らない なんにも 知らない
わたしは 知らない 知らない 知らない

知らない 知らない わたしの こころを
知らない 知らない 小鳥が 見ていた
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くまきち

くまきち

「孤独よ照らせ」

照らせ 照らせ 光よ 照らせ
光は 孤独なのだから
ひとりでに かがやくのだから

回せ 回せ 宇宙を 回せ
思うより なにもかも短いのだから
夜ひとつさえ 瞬きのうちなのだから

流せ 流せ なみだよ 流せ
こころは 弱さなのだから
弱さを抱えて 生まれ落ちたのだから

凝らせ 凝らせ その目を 凝らせ
見ようとしなければ 見えないのだから
夜闇にさえ かがやくものはあるのだから

許せ 許せ おまえを 許せ
おまえは 光なのだから
ひとりでに かがやくのだから
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「フィクション」

運命というものが あるのだとしたら
それはわたしが 被造物であることを
否応がなしに 証明している

わたしの心を 映すため
柔らかい夜風が 頬を撫でる
頭から爪先まで 定められた音階が
軽やかに 奏でられる

考え込まれた 台詞を
わたしは 何でもないように吐く
巧妙に 編まれた伏線を
偶然であるかのように 漫然と踏んで歩く

はじまりも 結末も
すべては あなたの思う通りに
そうなるのだから せめて
あなたの思う通りの わたしは美しいか

運命なのだから きっと大した意味はないだろう
そうと 決まっているだけで
わたしや 世界にとって
愚かさのメタファー以上の 意味はないだろうが
あなたには あるのか
わたしをつくった あなたにとって 
わたしの価値は あるのか

わたしの喜劇が 誰かの心を逸らすなら
わたしはそれで いいと思う
被造物なのだから つくられたことを
つくった者がいることを 愛するしかない

ただ もし そうであるなら
あなたに 愛されることを
わずかばかりの 憐憫を
つまらないエンディングを 吹き飛ばす
雲を貫く 雷鳴を
小さな世界の さなかで願う
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GRAVITY12
くまきち

くまきち

「天使の原則」

わたしは 過去を慈しむ
不変の形を 抱きしめる

木漏れ日のなか 歌い出す
命のねじれに 手を添えて

明日に 名前をつける夜
プロメテウスのすぐ うしろ

暗い息吹を 吸い込んだ
あなたはわたし わたしはあなた

萎れゆく手の 愛しさよ
堕ちゆく 全てに祝福を

わたしは過去から 遠ざかる
翼は蹴った その空を
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GRAVITY13
くまきち

くまきち

「あいまいさの哲学」

とりとめのない思考は
あまりにもとりとめがないので

一つ悟ったように思えても
次の瞬間には
まるでわからなくなっているのであります

愛とはなにか
幸せとはなにか
人が憎いか
あなたを一生愛せるか
最期にはすべて忘れてしまうのか
この祈りに救いはあるのか
イルカはどこへ帰るのか
昨日の夕日はもう帰ってこないのか
戦いのさなか、あの少年の運命は
今日も夜は確かに来るか 
生きることは本当に本当につらくないのか

子供であっても、大人になっても
わかったような気がしていても
なにもわかっていないわけであります

わたしたちなど
そのくらいであるのならば
そう気張って生きることなどないのです

ただ足踏みをしたり
頭をさげたり
人を愛したりして
わたしたちは生きていくのであります
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GRAVITY22
くまきち

くまきち

「舞台」

舞台に出て 私たちは初めて命を持つ
そこには男も女も 人間も奴隷も獣も
貧富も美醜も病弱も
人種も善悪も全部なくなって

あなたと私は ただ踊るの
スポットライトに当てられて
目を瞑って
ときに気高く ときに穏やかに
神様が私たちに与えた
永遠の命をこの時だけは
そっと踊るの
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GRAVITY11
くまきち

くまきち

「言葉の子」

どうせお前は 嘘の一つも
ついたことなんて ないんだろ
綺麗な舌で 白いその手で
おれの嘘を 剥がし取った

お前は おれのことなんて
少しも 嫌いじゃないんだろ
くだらない 聞きかじりの哲学を
お前は 楽しそうに聞いていた

おれの傷に 触れたとき
お前は泣いてしまったよな
おれの肌が濡れる
雨が降る 今日が終わる
街灯が光る 白い月を撫でた

お前はきっと これからも知る
人とは違う ことの憎さを
若さを恥じる ことの青さを
前に踏み出せない 足の重さを
嫌いになった ことも全部
怖くなった 朝日も全部

全部 全部 全部 全部を
言葉はなぞった

震えるおれの心に お前は口付けた
泣きそうなうたを お前は聞いていた
お前は言葉の子 詩の種火を吹いた
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くまきち

くまきち

「わたしの全部を許して下さい」

神さま 父さま お父さま
わたしの全部を許して下さい

幼いわたしを 笑って下さい
一人でくよくよ いさせて下さい
昔の絵本を 読ませて下さい
消えない青を 返して下さい

わたしの全部を 戻せたら
哀れむ目すら 串刺して
震えた白い手 離さないまま
愛しき日々へと 戻って下さい

先生 くるっと 宙返り
アザミの花弁が 吹き荒ぶ
わたしの 世界も 空回り
オオカミの群れが 駆けていく

揺らいだ水面に 映る影
あの日の夕焼け 戻るまえ
欠けない月夜に 息は荒れ
誰にも知られず 涙は流れ

知らない街で 待っていて
猫の一つも 撫でないで
黄色く実った 立派なレモンを
わたしに目掛けて ぶつけて下さい

まだらにぽつぽつ 雨あられ
暗い月光に 世は爛れ
あの日の夕焼け 思い出す
わたしの全部を 思い出す
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くまきち

くまきち

「とおくとおくのお星さま」

わたしは 見える
煌々とした そのなみだ
瞬く間に 朝焼けに呑まれ
そして流れていく わたしたちへの
迸る 色とりどりのなみだ

きらきらと 耳をうつ
さよならのうたを うたうのかい
なだらかな 音階を
ためらわずに ひくのだね
たくさんの さよならは
あなたにために なったのかい

わたしたちは ほとんど違うけれど 
きっと もともとは一緒なのだと
信じている
信じなければ なにも愛せないのだから
そのなみだを 触れられずとも
さよならの仕方を 知らずとも
大切なことは きっと知っている

その瞬きを わたしはずっと
忘れないように しておくよ
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GRAVITY14
くまきち

くまきち

「土の重石(おもし)」

もうしばらく帰っていませんが
わたしの心は
いつまでも 故郷の山にあります

あの頃の 濡れた土の匂いが
わたしの こころに
ゆっくりと 層をつくるのです

ずざ ずざ ずざ ずざっと
懐かしい ばあやの手と共に
漂うような 音が聞こえるようです

時は流れ わたしも随分生きました
柔らかい土が いつか固くなるように
老いた手の 乾いた皮膚のように
不自由なこの 身体のように

わたしのこころに 積もった土は
重く 確かなものになりましたよ
それを見つめては 目を細める毎日です

わたしは
わたしという 存在は
器を置き去りにして
いつからか 重石(おもし)になったのです

祖先の墓を拝んだときの 静けさ
山の水をがばっと飲んだときの 清冽さ
庭の柿の木にぐっと登ったときの 高さ
大きな鳥に睨まれたときの 恐ろしさ

どれも 目に浮かぶように鮮明で
まだまだ 離れることはない
土の匂いが ここまで

茶色のささくれた 皮の木々が
わたしのからだに 根を張ったような

わたしは あの頃の土に
まだ 埋もれている
少なくとも こころは
あの山に埋まったまま
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くまきち

くまきち

「とびきりの言葉」

嫌われないように 濁した言葉も
好かれるために 飾る言葉も
誰かへの アドバイスも
小気味の良い ジョークも

結局は 自分のために
放っていることに 変わりない
そう 思うと
少し さみしい

もしも もっと強くなれたら
あなたのためだけの 言葉を
あなたにだけ そっと伝えてみたい

きっと その言葉は
ぼくが 今まで話した
ありとあらゆる 言葉のなかで
とびきりの価値を 持つだろうから

嫌われても いいから
好かれなくても いいから
笑われても 
笑われなくたって
それで いいから

あなたのためだけの言葉を
あなたに そっと伝えてみたい

そう思うことも 結局は
自分のためじゃないかと 言われたら
その通りなのですが
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くまきち

くまきち

「どうなってもいい日」

いつもより少しだけ 風があたたかかった
なんだか 透くような良い香りがするし
お日さまも 気持ちよさそうにひかっている

こんな日は もはや
どうなったって いいのだ

公園で 小さな小さな 石ころを拾って
そっと ポケットに入れてしまおうか

凛とした草花の より青いところを
すっと 撫でつけてしまおうか

真っ白なノラ猫と じっと見つめあって
にへらっと 笑ってしまおうか

今日は どうなったっていいのだから
なんだか いい感じにしていればいいのだ

空に隔たった 宇宙を見ていると
ぼくが なにかを思うことは
きっと 祈りになるのだ 
と思わなくもない

それが 名も知らぬ 誰かに
届いても 届かなくても
まあそれはそれで いいのだ

大抵のものは 流れていくのだ
ならば どうなったって
それは良いことだ と思わなくもない
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GRAVITY16
くまきち

くまきち

「レミー」

古い絵本の タイトルを撫でた
木漏れ日に 耳を澄ませる
幼い手を 僕はそっと握る
過去はどうして あたたかいのか

優しさの 数を数えていた
小麦畑を背に 眠るプシュケー
暗い部屋で 話でもしようか
明日なんて すぐには来ないのだから

放課後の寄り道を なぞる
覚えてる歌を 歌ってさ
ありふれた 夕焼けが見える
もう 戻れないのだけどさ

柔らかい夜が 街を呑み込んだ
くじらが 星の隙間を泳ぐ
帰れない 青い風がないて
少女の前髪を 揺らした

頬を伝った 消えないスマルト
灼けた空想が 冷めないまま
あやふやなものが 溢れないように
僕は 僕の物語を書いた
僕だけの 思い出を夢に見た

まばゆい朝は 
きっと ゆるりとほどくのだ
僕の今日だけを残して
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くまきち

くまきち

「絵描きのラパン」

描き込まれた キャンバスの上
街灯が 寂しげに光るから
あの夜を 描きたくなった
生きるならば そこがいいと思ったんだ

まともに線も 引けてないし
影の形すら 掴めていない
誰かの美しさを 知らないまま
描きたいものが 描けないで

震える指は 真っ白で
汚れた筆を 動かして
長い前髪を 突いた月光の
あの感触を 描きたくて

世界は 私が思うより
ずっと 綺麗だと思うから
私よりも ずっと綺麗で
こんな絵より よほど綺麗で

不細工な線で けがさないで
型無しの愛じゃ なにも描けない
未熟な自分で 生きていけるほど
私は 大人になっていない

こんな小さな 苦しみごときで
涙を流した 夜ごときで
私だけの なにかをつくるとか
そんなの 思い上がりだよな

穴が空くほど 月光を浴びた
手が消えそうなほど 白くなる
自分の限界なんて 分かってる
才能がない 努力も足りない
私は美しさを まだ知らない

午前3時
描き込まれた キャンバスの上で
街灯が 揺れる

白い手は懲りずに まだ絵を描いていた
まだ生きたいと 思ったから
気持ちよく 寝たかったから
まだあの夜を 知らないから
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くまきち

くまきち

「それだけ」

人生なんて 単純だ
なんて 言ってみたいだけ

人間なんて 簡単なものだと思って
はやく 安心したいだけ

ただ それだけだよって
得意げに 話してみたいだけ

知らないものは 知らないままで
分かりやすいものだけを 
愛でていたい だけ

ただ それだけのあなたが
どれだけの人を 救うのだろう
それとも あなただけ?

それだけの 人生なんて
ほんとうは 嘘なんじゃないの?

でも あなたが それだけだって
思ってしまったら

いつか ほんとうに それだけしか
見えなくなっちゃうんだよ
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くまきち

くまきち

「この世界をうごめく全ての子どもたちへ」

久しぶりだね
よく 顔を見せて
素敵なあたたかさだね
君は きっとうまくいくよ

そのたおやかな 白い喉元が
青くなって 微笑んで
あなたが 人を愛せますように

病気の調子はどうだい
許されなくたって いいよ
結末なんて 劇的なだけじゃないのだから
信じることも 治療の一つだって
この前 知ったんだ

握手をしてくれるのかい
少し大きくなったかな
あたたかいね 涙が出そうだ

その手が 綺麗なままで
終わらないことを ずっと祈っている
何もかも 分からなくなったのなら
妖しきエメラの明星を 見るといい

さて では 
そろそろ行くよ
もうすぐ もうすぐ 終わるからね
GRAVITY
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くまきち

くまきち

「クルシュカ」

しかたない って思う?
あなたが もういないこと
いつか 消えちゃうことも

それは そうね
でも それ以上なんて ないわ
ええ そう思う

だって 誰に望まれたことでもないから
ただ 沈んじゃっただけで
誰も 報われてなんかないものね

生きることすら 誰かにとって
ものすごく 思い上がったことなら
わたしは そこに行き着くのかも知れないけど

ねえ クルシュカ
最後に あなたに聞きたかったのだけど

あなたは夕食を 食べていた?
前菜はなんだったか おぼえてる?

ええ おぼえている
なんとも 甘かったわ
オレンジ色の街灯みたいに
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くまきち

くまきち

「覚悟」

わたしは 生きるため
いつだって 覚悟をする

覚悟を して
ちゃんと 生きていく

あなたの こころを
逃げずに 見つめる

いつか 死んでしまう
この命を 抱きしめる

きっと出会う 苦しさに
救われることを 思い

涙を流した 過去にも
きちんと お別れして

あなたの頬に 手を添える
あたたかい あなた

いつか 冷たくなるのだろう
それでも わたしは
あなたの あたたかさに触れたのだから

何があっても あなたと
ずっと ずっと
一緒にいるって 決めたよ

この覚悟が わたしを
ここまで 連れてきた

わたしは 覚悟をして
あなたと 一緒に
生きていく
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くまきち

くまきち

「深くなくとも」

願わくば 深くなくとも 
あなたの こころを 揺さぶりたい

苦しみに触れずとも
あなたのことを 少しだけ知りたい

大げさじゃなくても よいのだ
あなたの こころを 彩る
一本の草木に なれたなら

あなたの命を 尊ぶ
ただ一つの命に なれたなら
わたしは それで よいのだ
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くまきち

くまきち

「夜のくじら」

ぼくは 眠れない夜に
夜風の海を たゆたう
青いくじらを 見た

白い雲さえ 追いやって
星を ごくん と飲み干して
おしゃべりな 雨音とともに
故郷を捨てて 来たらしい

月のような目が ぼくを見た
大きな口が ぱかっ とひらく
なにかを 話すつもりの ようだ

人の子 おれの姿を 見たな
おまえは まだまだ 眠らないのか
くじらの声は 波のよう

ぼくは うん とうなづくと
くじらは にやりと笑って 言った

それなら それなら しょうがない
おれらの仲間に 入れてやろう

ぼくは くじらの 背に乗って
くじらの 故郷の話を 聞いた

遠く 遠くの 波の向こう
星も見えぬ 風も聞こえぬ
世界の果てに ひとりぼっちで
くじらは さみしかったのだそうだ

しばらく すると
くじらは 少しだけ なみだを流した
その なみだを浴びたら
なんだか かなしくなってしまって
ぼくも 少しだけ なみだを流した

すると くじらは 微笑んで
飲み込んだ 星を ぷっと吐き出し
ぼくを 家に帰すと
また どこかへ 行ってしまった

きっと くじらは
ぼくの しらない しらない場所で
また 少しだけ なみだを 流すのだろう

星は 息を 吹き返したように
また きらきらと かがやきはじめた
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くまきち

くまきち

「祈る」

わたしは わたしのこころが
少なくとも 健やかであることを
ただ 祈るしかない

その こころの
なんと 空虚なものか

祈る その手の
なんと 投げやりなことか

果てしない 空を掴み 
終わることなく 砂を掬う
おまえは なにに救われるのだ

そう こころに 問いつつも
わたしの こころは
しかし 祈ることを
やめなかった
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くまきち

くまきち

「帰路」

カラスが鳴いた
夕日が沈む
もうすぐ
わたしが見えなくなるよ

星々が空を すぐに引きずってしまうから
感傷に浸る暇なんか ありはしないよ

どこからか吹く風が 夜を爪弾くから
わたしの声なんて きっと掻き消える

優しげに瞬く月光が あまりに眩しいから
わたしの心すら あなたには見えなかったね

あなたにとって
今日のわたしは 死ぬのかな
冗談
帰るだけだよ
あなたが見えないところへ

でも
わたしと また会えるかは
分からないんだから
忘れないで 忘れないでよね
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くまきち

くまきち

人に知性とかセンスとか人徳を褒められると、分かっていても頭や感性や人格が優れていると勘違いしそうでガチ罠

謙虚を忘れるなよ

そんなふわふわしたもの、その瞬間の主観的な印象に過ぎないし、探そうと思えばいくらでも見つかるものだ
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くまきち

くまきち

「ペル・アスペラ・アド・アストラ」

醜い羽を 力強くふるわせて
わたしは 飛んだ

深い夜を泳ぐように
まばゆい明日を 吹き飛ばすように
あなたをめがけて
わたしは 飛んだ

呼吸が風に ちぎれて消える
わたしの過去が 火を帯びる
雲を飛び抜け 空気を裂いて
数多の空が 終わるまで

わたしの世界を 超えるまで
命を忘れて わたしは飛んだ

むしれた羽を なおもふるわせ
生の苦しみを 一身に受け

吐き出す血すら 飲み込んで
あなたの光に 恋焦がれ

あなたを めがけて
わたしは 飛んだ
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くまきち

くまきち

「アトラス」

それは夜
さざめく宇宙の 真ん中で
おれは命の小ささに 顔をしかめる

川の流れが おれの鼓動を押し流す
風の息吹が おれの呼吸を運ぶ

草木はおれに 踏みしめられながら
おれよりも ずっと長い命を
その身に湛えていた

おれは おれの命よりも重たい
なにかを背負って 立っていた

夜はまだ 明けない
焚き火は おれの罪を
飲み込みはしなかったが
おれの冷たさを食らって
眠ってしまった

遠くで 星が見える
青い火が 恐ろしいほど
はっきりと そこで燃えていた
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くまきち

くまきち

「ワールド・エネミー」

おれは 生きている
おれは 生きているから
きっと 誰かの敵になりうるのだろう

おれは 必ず死ぬ
おれは 必ず死ぬから
きっと なにかを残すことを強いられる

おれは まずい酒を飲んで 涙を流す
おれは 知らない不平等に いかる
おれは なにかを奪って 生き永らえる

おれを 救いたい者が いたなら

いや
どうだろうか
おれは 救われたいのだろうか

おれは ただ 楽しいことをしたいだけだ
そんなおれが 救われるとでも?
馬鹿をいうなよ
馬鹿にするなよ

おれは 椅子を取ることで 生きている
座れない誰かを 足蹴にして

そんな 誰かだって
ただ 楽しいことをしたいだけだろ?

じゃあ そんなお前が
救われるとでも 思ったのか?
馬鹿を言うなよ
馬鹿にするなよ
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くまきち

くまきち

「感受性」

卒業式は 悲しくなんてなかった
友達に会えなくなっても さみしくなかった
祖父が死んだ時も 涙は出なかった
あなたが消え去っても 
ぼくは乗り越えてしまうんだろうか

ぼくはなにも感じない
なにも感じてなんかない
この目に見えるものすら
きっと分かってなんかない
知らないことばかりだ

大人になっても
自分の感情ばかり 敏感になって
勝手に苦しくなったり 憎んだりして
人の気持ちなんて 見えないままで
知ろうとなんか しないままで

好きなあなたの 気持ちすら
分かっているようで なにも知らなくて
不器用に あなたの言葉を なぞるだけで
手探りに 頭のなかを 通すだけで

ぼくはきっと 冷たい目をして
冷たい心で 冷たい言葉を
世界に吐いて

冷たい手で あなたに触れて
冷たい肌が さむくてしかたなくて
涙がでて
冷たい過去を
冷たい明日を
つめたい つめたい こころを
冷たい ぼくを
あなたは 抱きしめた

あなたの温かさだけを 感じながら
ぼくは眠った
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くまきち

くまきち

「もう寂しくないよ」

青い夜を 生きていた
僕はひとりだけ
白い月を 縫い止めた
時間が止まる 命を止める

人間を 生きていれば
ひとりになること ばっかでさ
見てほしい 褒められたい
ひとりじゃないって言ってくれ

そんな風に 生きていたら
なんだか虚しくなってきて
パーティーのあと ベランダの隅
ひとりで 座って月を見上げた

もう 寂しくない気がするよ
人の温もりを 知ったから
もう 苦しくない気がするよ
苦しむことを やめたから

人は ひとりで生きていく
ひとりで 死んでいく
温もりも いつか冷める
死ぬ時は 苦しんだろうか

それでも あなたに会えたから
一生分 愛してもらったから

もう 寂しくないよ
ありがとう

世界は始まる 朝日は昇る
時計の針が 進んでいく
人が生まれて 人が死んで
寂しさを抱え 愛を抱えて
冷たくなって 炎に燃えて
誰かの 命がまた廻る
いつか 僕の番がくる
苦しいんだろうか
苦しくてもいいよ

白い月が 遠くに見えた
もう止まらないで いいよ
青い夜が 僕を抱きしめた
もう抱きしめなくても いいよ
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