昭和懐古録 ♯ 25#グラビティ昭和部 ・昭和3年(1928年)☆『漱石の『猫』訴えらる』9月10日 日本橋区南茅場町二二大倉保五郎氏は豊原弁護士を代理人として牛込区早稲田南町七夏目漱石氏の息純一、及び神田区南神保町書店岩波茂雄両氏を相手取り十日東京地方裁判所に損害金三万千円支払請求の訴訟を提起した。 その理由は、大倉氏は明治三十八年十月夏目漱石氏の著作に係る「吾輩は猫である』の著作権共有並に発行権専属の契約を結び同月上巻を発行し続いて中下巻を発行したが、その後同氏の著に係る『行人」『文学論」等も同様の契約の下に発行していた処、最近に至り純一氏並に岩波書店は大倉氏に何の交渉もなく、所謂円本と称する「漱石全集』数十万部を発行し巨利を博し、原告(大倉)に大損害を与へたので本訴に及んだ。(時事新報)