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太郎さん

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俳句の愉しみ 三

から鮭も空也の痩も寒の内
Karasake mo kuya no yase mo kan no uchi (日本語の音表記)

芭蕉

季語は「寒の内」。寒の入から立春の前日までの約三十日間。最も寒い期間。後はとくに私が書き加えることがないので『芭蕉全発句(筆者=山本健吉)』から抜粋する。
「から鮭」は腸を去って、塩引しない白干の鮭。「空也の痩」は空也僧、つまり鉢叩の痩せた姿。未明から腰に瓢をつけ、踊躍念仏をし、和讃を唱え、鉦を叩いて茶筌(お茶を立てるとき茶をかきまわして泡を立てるのに使う道具)を売りながら、洛中洛外を歩く。芭蕉をはじめこの頃の俳人は、ことにこの鉢叩を詠むことに執心した。
乾鮭・空也(鉢叩)という季の景物が「寒」という現象自体と、根源的に響き合う。からび・やせ・冷えという中世的芸術理念が、それらの季物に滲透している。しかもこの三つの名詞が、すべて乾いた破裂音のk音の頭韻で並び、そこに一種凛烈の気が通っている。「も(mo)「の(no)」「も」「の」という四つのテニヲハもよく働いている。芭蕉は心の味いを言いとろうとして数日腸を絞ったとのこと。芭蕉が非常に表現に苦心した、類例の少ない傑作である(抜粋者が適宜改稿・加筆)。

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