19:17の指輪は虹を吐かない冷気が後藤の耳たぶを撫でる時、SEIKOの文字盤は19:17を刻んだままだった。居酒屋のコースターに酔った松本が描いた「函館山イルミネーション」の約束、あの日から針が止まっている。レジの赤外線が松本の婚約指輪を舐める。安物の革ベルトが切れ、金属バックルがおでん鍋に沈む。湯気越しの防犯カメラが、彼の指先をノイズに変える——昨夜、高級醤油で滲ませた招待状の箔押し文字が、今も掌で灼ける。私物ロッカーで滴る透明傘。骨に彫った「桜祭り2003」の文字が、台風時のメモと重なる。最終電車のドアが閉まる音で気づく、飴箱の指紋が傘の柄に転写されていた事を。#BL #BL腐り注意 #BL創作の極意