昭和懐古録 ♯ 29#グラビティ昭和部 ・昭和3年(1928年) ☆『説教強盗現る』 12月1日 神出鬼没、巧に視庁の戒網をくぐり、郊外六十余ヶ所を荒し廻った例の説教強盗は、今度は市内へ出て荒し初めた。一日午前三時二十分小石川小日向台町三ノ九二筑波高速電気監査役大賀基作方便所の鉄の窓格子を破壊し、手拭で覆面し手袋、懐中電燈を持った印半を着た、一人の強盗が押入り、夫人ひな子外三名が就寝中の八畳の間の箪笥内から現金百十五円を窃取し、次いで一室隔つた、奥の六畳に侵入、就寝中の甥三井合名山林部員大淵勝一夫妻に「金を恵んでくれ」と穏かに脅迫、五円余を強奪、例の本性を出して「犬を飼ひなさい、犬がいないといくら戸締を厳重にしても駄目です」と捨て科白を残し、勝一氏の足袋を貰って四時頃悠々裏口から逃走した。(時事新報)つづく…。