サザンオールスターズとその時代 # 57☆桑田ワード 桑田佳祐の歌詞ほど、日本語破壊者とか日本語の恥者などと批判にさらされた者はいない。 桑田が小さい批評には目も耳もくれずにこの45年間やってきたのには、そうした批評や揶揄をいちいち構ってはいられない、と感じざるを得なかった島国日本の一斉袋叩き気風が背景にあるのは、悲しいことである。 しかし、中には正面切って桑田佳祐の紡ぐ歌詞について理解を示した識者も多い。 作家の村上龍は桑田佳祐初の著作本、新潮文庫の『ただの歌詞じゃねえかこんなもん』のあとがきで、桑田佳祐を高評価している。 一方で2017年、サザンオールスターズデビューから39周年にして桑田のソロ名義だったが、NHKの朝ドラ「ひよっこ」の主題歌に♫若い広場 が使用され桑田は漸く市民権を得た…と思って喜んでいたら、ドラマが始まって暫く経ってからNHK会長の定例会見で時の会長が朝ドラに桑田佳祐の曲が使われたことについて訊かれて、…曲はいいとは思うが、歌詞がちょっと意味不明な箇所がある…とぶち上げたのである。桑田佳祐の歌詞についてはデビュー時から散々言われた…意味不明、と云う言葉を久しぶりに聞いた気がして、違和感しか無かった。 それと同時にこの会長のKYさにNHKの体質の古さが読み取れるではないか。 この時期に桑田佳祐の歌詞を取り上げて"意味不明"と両断する批評を私はあの時…古臭いと批判するよりも、時代錯誤も甚だしいと思い、およそ真っ当な評価とは思えなかったのだ。 そもそも、歌詞とはどこまで云っても詩なのである。 誰もが納得の行く歌詞の曲を求めるなら最初から桑田佳祐に曲依頼するなよ、と思うし、そもそも分かりやすい歌詞とはなんだらうか。 詩にしても詞にしても、抽象的なゆえに見事な表現性として成り立つものが、大抵の作品である。 桑田ワードとも云うべきその猥雑さを表現してきた桑田佳祐の歌詞は、称賛と批判が常に繰り返されてきたが、称賛が批判を上回る様になったのはアルバム『人気者で行こう』リリース後であろう。つづく…。