学生時代は北村薫〈時と人〉シリーズ、〈覆面作家〉シリーズ、〈円紫さんと私〉シリーズをよく読みました。本作は〈円紫さんと私〉の20年ほど後を描いたもの。本の世界を探偵する「私」の眼差しの成熟がなんとも頼もしい。芥川「舞踏会」のオチの改稿、太宰「女生徒」と有明淑日記の関係など、近代文学の有名な謎を、先行論の基本を踏まえつつ鮮やかな手腕で小説世界に落とし込んでいきます。近代文学好きにはたまらんです。前々から思っていたけど、作品の解釈や研究って、探偵行為とよく似ている。そしてこの帯を見て気づいたけど、確かに米澤穂信って北村薫の系譜だわ(1冊しか読んでないけど)#読了