龍馬暗殺伝 .10☆三谷幸喜の破綻と情勢分析力 公家の岩倉具視(中村有志)と西郷隆盛(宇梶剛士)との間で龍馬暗殺への暗示がやり取りされた後、大久保利通(保村大和)に幕府方の寺田屋騒動の坂本龍馬(江口洋介)逮捕容疑の機運を利用して殺めるプロットを語らせる。続いて、見廻組の佐々木只三郎(伊原剛志)の元に薩摩からの龍馬潜伏先情報である「さの字 近江屋」というメモがもたらされ、間髪を容れずに近江屋事件が起こる、と言うストーリーだったが、幕府公用方と薩摩が闇的に繋がっている…というストーリーに無理を感じた。そのメモ一枚で、見廻組が行動を起こす…という流れはどう考えても不自然だ。ましてや、薩長同盟は時節的にも明らかな慶応三年の冬である。…これは罠だ、といぶかってもおかしくないのに、佐々木らと薩摩がそれだけ親密だったという伏線でも、あればまだしも唐突にこの流れは不自然極まりなかった。 しかし、三谷は龍馬を保幕派として描き新撰組にそれを守備させ片や見廻組の佐々木只三郎は幕府解体の首謀者として龍馬に対して憤怒の塊として対立軸に描いた手法は観る者に一定のカタルシスを与えていた。と、云うのも中村獅童演じる架空の人物捨助が探索に行き龍馬の隠れ家である近江屋に行き龍馬と御陵衛士の下っ端に成り下がっていた藤堂平助(中村勘太郎)らの居る部屋までおどけてシャシャリ出て行き龍馬に諭されて主人の只三郎の下に帰っても知らぬ、とシラを切り通した捨助が「そんな情報信じるんですかい?」と訝るが只三郎は龍馬斬りに赴く。一方でこのドラマの中で主人公の新撰組は龍馬暗殺にどう関わっていたかをみて観ると、旗本に昇進していた近藤勇(香取慎吾)は幕府の重鎮永井尚志(佐藤B作)から龍馬が所謂、保幕派であり今後の幕府の行末に龍馬は欠く事の出来ぬ人物であることを告げられ新撰組は龍馬を守る方針を打ち出す。しかしNO2の土方歳三(山本耕史)は訝るが近藤は自ら龍馬救援に赴こうとさえする。見兼ねた土方がそれを阻止、已む無く近藤は永倉新八(山口智充)と原田左之助(山本太郎)に龍馬救援の指示をだし近江屋に走らせるが、時既に遅し、凄惨な現場を観た原田が叫ぶ「コナクソ!」はここで生かされる。こうした2004年段階で知られていた龍馬暗殺の背景や証言を生かして三谷はそれを描こうとしていたことはこのドラマから読み取れる。つづく…。