好きなものについて語るとき、言葉選びは慎重になる。それは、他者でも自分自身でも同じだ。吉田松陰が好きだ。だが吉田松陰が好きと言う著名人はとても慎重に観察する。吉田松陰は明治維新の立役者、誠実な愛国者、革命家。ポジティブな面を政治利用され過ぎている。冷静に考えよう。徳川からすると、彼はただのテロリストだ。そして、黒船に乗って学ばせてくれと交渉するヤバい人だ。日本には死罪になるかもしれないのに学びたいと黒船に乗ろうとするヤツがいるとペリーの日記にも書いてある。(ペリー提督 日本遠征記という文庫で読める)もちろんそのことで幕府に吉田松陰は捕まる。ただし長州藩の先生でもある吉田松陰を死罪にすることで長州ともめたくない幕府。内々で罪を軽くして、すぐに長州に帰らせようとするが吉田松陰は幕府要人暗殺計画を自分から伝える。理由は真心から話せば伝わると思ったから。結果、死罪決定。遺書のような留魂録を残す。それを神格化して久坂玄瑞が潔白な国のために生きた人のイメージを作り、それが教科書に載るまでになる。29歳で志を持って逝った英雄。しかも女や金などの不名誉もない。ピュアっピュアっ!のため吉田松陰にそんなエピソードはない。ただの自分が正しいと思ったことを貫くヤバいテロリストだ。だが、そういった実像に近い吉田松陰が好きだ。吉田松陰は自分の教え子を「諸友」と呼んだ。これは同じ志の仲間でたまたま自分が教える立場なだけであることが含意されている。また本当に真心から塾生に接している。語りたいことはまだまだある。好きなものを探求するのは楽しい。ただすればするほど、話し相手がいなくなる。もどかしいが、相手にあわせて知りたいことを知りたい分量伝えられる技術は学びたい。興味を持ってもらえれば大成功だ。#読書