かれこれ20年ほど前であろうか。オオクワガタブームが沸き起こり80mmが出現する数年前のこと。インターネットの掲示板上では医者や歯科医師を交え、どうしたら80mmの壁を越える個体を育てられか科学的な思考を巡らせていた時期があった。俄に登場した菌糸瓶のおかげで、79mmまで羽化するのだがどうしてもあと1mmが越えられない。そんな時代だった。そんな時に兵庫にお住まいのとある大企業の研究員であった。彼もまたオオクワガタに魅せられ、仕事である実験の傍ら、木材とバクテリアの研究に着目していた。その最中ある未知のアミノ酸を見つける事となる。彼から少量譲り受け木材粉砕マットに加えてみたところ瞬く間に発酵し、オオクワガタに投与したところ、通常のマット飼育では及ばない78mmが羽化したのだ。これは当時の菌糸瓶で羽化する個体と遜色ない。非常に驚いたものだ。このアミノ酸は癌に有効な可能性があったため、情報統制が敷かれ、彼はこれの外部販売禁止と動物への接触を禁じられてしまった。残念で仕方ないが、偉大なる発見である。時代は変遷し、外国産と掛け合わせたオオクワガタをしれっと高値で販売する者が現れ、それを購入した初心者がまた奇妙なブランドネームを付けたりと今や往時を見る影さえない。「どんなに時代が変わろうと国産オオの壁は80mmだよ」よくわかってる者は異口同音にそう言う。何故ならば最新技術とやらで大きくなるならば、自己採集した個体からも羽化するものだからだ。しかし誰も追試で再現出来てない。だから科学的根拠はかけらもない。