ジョン・ガリアーノ氏のドキュメンタリー映画を映画館で観てきました。原題はHIGH and LOW John Galliano生い立ちからファッション界の注目の的になるまで、そして失言による転落とカムバックした現在についてジョン・ガリアーノという人間の人生を振り返るもの。コレクションを振り返るものではないので、ファッションの知識がなくても大丈夫です!彼の失言のシーンからこの映画ははじまる。最初から最後まで本人がインタビューに答えている。回想イメージに演出を挟むので多少マイルドで映画として見やすくなっていた。注目はされてもビジネスとして売り上げにつながらず、資金がなくコレクションを見送ることもあったけれど、彼の才能に惚れ込んだ周囲の人の協力があり彼はデザイナーとしてどんどん地位を確立していく。いつしか年32回のコレクションをこなす激務になり、信頼するビジネスパートナーの死が訪れる。飲酒、処方箋、そして仕事に依存し壊れていく。これは彼に限らずいつの時代も名だたるデザイナーは、みんな同じように壊れていっているように思う。資本主義がどうとか、消費されるだけの業界だとか、批判する側が能動的な消費者だったりするので「どうか天才を早く連れて行かないでください」と庶民のわたしはいつも祈るばかりだ。誰かを信じることはその何倍も自分を信じなくてはいけないな、と彼が失言をして転落しても変わらずに協力するケイト・モスやナオミ・キャンベルを見て思う。この映画の終盤では彼が舞台袖で「CINEMA INFERNO」を見つめていた。2022のコレクションだったと思う。わたしは去年渋谷で「CINEMA INFERNO」というマルジェラの展示を見に行ったことがあった。そこではそのショートフィルムが流れていた。帰り道、わたしはあの時渋谷で見たコレクションとショートフィルムを思い出していた。彼の人生を知ると全然違って見えて、より魅力的だった。