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マサヤス龍之介

マサヤス龍之介

芥川竜之介考  ♯ 22

☆河童忌と龍之介の顔 3️⃣
 昨日までは、どれも…美しさを強調したものばかりだからか、松本は反対意見も同掲していて興味深い。
「手の指が非常に長くて、節と節のあいだの皮膚にまつ黒く垢が溜まつて、鶏の足か何十日も湯に入らぬ熱病人か何かの手のような具合だった。指さきの腹だけつるつる綺麗なのが特に病人くさかつた。」
「…顔など洗わなかったのかも知れない。」中野重治
著者本哉はそういう中野の文から芥川ファンが(このような本は大抵ファンしか読まないから)不快な思いを抱かぬように、本当に重病中だったのかも知れないし、手の汚さは庭の泥でも引っ掻き回した直後だったか墨汁を手にひっかぶったかして、黒い筋が残ったのかも知れない、とフォローを入れている。
そんな松本は更に考察を深めて、芥川の中学時代の写真から顔の右半分の目と眉には人を食ったようないたずらっぽさが秘められていると分析している。

私も作品と言うより顔の良さから芥川ファンになった口なのでこの本を西神田の文学書専門古書店西秋書店で見つけて以来、硬いものばかりでない文学書の魅力に益々魅せられて、古書店通いに磨きがかかっていくのを止められなかった時期の事を思い出す。
神田神保町付近の文学書専門店では未だに営業中の西秋書店だが店の規模は狭いが在庫は豊富なのが特徴である。
片や靖国通りに面した駿河台寄り、神保町の古書店街のメインストリートにある文学書専門店が八木書店である。
前者は地の利的には日大の学生贔屓、一方の後者はその場所から圧倒的に明治大生贔屓である。
しかし、どちらかと言えば小生には後者は少々敷居が高い。
店内も広く選び易い、在庫も劣らないはずなのに、西秋書店の方の選書観に大いに共鳴した日々を今でも思い出す。
芥川関連の主要本から大部の書、マニアックな評論まで狭くて裏通りだが、西秋書店で全て集める事は可能である。
ただし、根気強く通うことが必携ではあるが。

つづく…。
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