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太郎さん

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無常

のちに陳と名乗るこの男は父の命令により三度西域の前線に送られて帰還した。この部族の王である父もこの息子を受け入れざるをえなくなり陳に一部隊と妻を与えた。

陳はその部隊を率いてかつての仲間たちに弓を引かせた。そのあとみずから妻を射殺しその一族を殺させた。そして父である王を殺させてこの部族の王となった。陳は南の王朝と手を結びその王朝の内乱鎮圧にちからを貸したが金品のみしか与えられなかったのを不服として王朝の混乱に乗じてその王朝の首都を制圧した。

この広大な王朝を手に入れるために陳は手段を選ばなかった。陳は王の代理として君臨し各地の内乱を平定していった。傀儡の王を利用して内乱の指導者たちに勲位を濫発して内乱軍を親子、兄弟、師弟等、仲違いさせて混乱させたのだ。

内乱を鎮圧したあと陳は前王朝の王を殺してはじめてみずからを王とした。わざと民衆の見える王城の高台で前王の首を刎ねさせ、その髪を陳自身が握って蒼ざめた首を掲げてみせたのだ。前王朝よりさらに大きな国土を治めるにあたっても手を抜かなかった。善政を敷いておいてみずからに都合が悪くなった者を殺していった。

そんなとき陳は病に倒れた。医師は青ざめて部屋から出て行った。みずからが年老いたことに陳は気づいた。やがては自分も死ななければならないことを悟ったのだった。大国の王になったみずからをふりかえり、人生たったこれだけか、と思った。陳はあらゆる識者に問いを発し、ついに仏教を手厚く保護した。息子に王位を継承したあと髪を剃り仏教に帰依して一生を終えた。
                    
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