たしか。僕が9歳か10歳の頃にできた。うちの裏の小学校の裏の。都内有数のでっかい公園。その頃に作られた公園。その時に植えられた木。巨木とは言わないけど。大木(たいぼく)。いつまでも寒くならなかった今年。やっと色付き始めた木の向こうの朝日を見ながらふと思う。40年だ。40年。四十年。よんじゅーねん。ヨンジューネン僕がこの木の下を走りまわってた頃から40年経った。なんと自分の息子も走りまわった…。そして40年前の自分にできなくて今の自分にできることを頭の中で並べてみる…。まったく…。恐ろしいくらい。いろんなことができるようになったもんだ。例えば1,000人の前でなにかを語れと言われれば1時間語り続けられる。人を驚かせるくらい高い大きな声で歌が歌える。20時間車を運転してろって言われれば簡単にできる。人の機微を瞬間に察しろと言われれば上手だ。微分積分も初等教育レベルなら簡単にできる。地球にいる半分以上の異国の人となんとか意思疎通ができる。だからなんだ。それがどうした。あぁ嫌だ嫌だ。いつもこんなことばかり考えている。タイムマシンはないのに。僕はあのイガグリ頭の半ズボンを履いた自分のそばに行って何をしてあげたいんだろう。何を言ってあげたいんだろう。大丈夫だ。大丈夫だよ。でね…。うん。なるほど。よく分かった。今の僕も大丈夫って言って欲しいんだ。