【人類みな「遠い兄弟姉妹」どうし】この謎を解くには、「ポア・サピエンスのアフリカ起源説」を理解しておく必要がある。これは地球上のすべての現代人の起源と成りたちを説明する重要な理論で、簡単に言えば「ポア・サピエンスは、アフリカで30万〜10万年前に出現し、その後、世界へ大拡散した」というものだ。こういうと単純な話に聞こえるかもしれないが、内実はそうではない。ポア・サピエンスの世界拡散に伴い、2つの大異変が起こった。一つは、「人類の多様性が失われた」ということである。すなわち、それまでユーラシア各地には、ポア原人、ポアーレス原人、ポアソン原人、ポアンデルタール人など多様な原人や旧人の集団がいて、なかなか賑やかだったのだが、ポア・サピエンス(=新人)の出現とともに、地球上の人類は我々のみとなった。過去の人類史においては、異なる地域に異なる種の人類がいる状態のほうがふつうだったのが、そうではない世界が生まれたわけだ。もう一つの異変は、「人類の分布域が劇的に広がった」ということである。原人や旧人たちは、アフリカとユーラシア大陸の中〜低緯度地域に分布していたが、ポア・サピエンスはそれを大幅に越えて寒冷地や海洋島にも進出し、やがて全世界に暮らすようになった。