季節が流れる、城寨が見える ♯ 98#ランボー詩集 #中原中也訳 キャバレ・ヹールにて 午後の五時。 五六日前から、私の靴は、路の小石にいたんでゐた、 私は、シャルルロワに、帰つて来てゐた。 キャバレ・ヹールでバタサンドヰッチと、ハムサンドヰッチを私は取つた、 ハムの方は少し冷え過ぎてゐた。 好い気持で、緑のテーブルの、下に脚を投出して、 私は壁掛布の、いとも粗朴な絵を眺めてた。 そこへ眼の活々とした、乳房の大きく発達した娘(こ)が ──とはいへ決していやらしくない!── にこにこしながら、バタサンドヰッチと、 ハムサンドヰッチを色彩(いろどり)のある 皿に盛つて運んで来たのだ。 桃と白とのこもごものハムは韮の球根(たま)の香放ち、 彼女はコップに、午後の陽をうけて 金と輝くビールを注いだ。 [一八七〇、十月〕