自分のスマホに非通知からの着信。不明女性「白石(𓆉🐢)さんですか?」低めだが20代から30代ぐらいの若い女性の声。「白石(𓆉🐢)」の部分は私の本当の名字だった。白石(𓆉🐢)「はい。どちら様ですか?」不「わたしは警視庁捜査二課の中村といいます」白「どんなご用件ですか?」不明女性「わたしは警視庁捜査二課の中村といいます。貴方にある重大な事件に関連してご協力いただきたいのですが、極秘の捜査なのでこの電話の会話を聞かれないようにしなければいけません。今貴方の近くには誰もいないですか?」白「はい。この部屋にいるのは私一人です」不「この度青森県警からの捜査依頼で、白石(𓆉🐢)さんにお尋ねしたいことがあります」白「あなたは警視庁の中村さんとおっしゃいましたね?」不「はい」白「お名前、フルネームで教えて下さい」不「ナカムラサトミです」白「漢字はどういう字ですか?」不「真ん中の中、市町村の村、古里の里、木の実の実です」白「階級は?」不「巡査部長です」白「警視庁のどの部署でしたか?」不「捜査二課です」白「捜査二課はどんなことを担当するところでしたっけ?」不「詐欺などの知能犯です」白「それで私に聞きたいことというのは?」不「青森で起きた特殊詐欺事件に貴方が関わっている疑いがあります。白石(𓆉🐢)さんはこのあと青森県警までご足労いただくことはできますか?」白「いやです」不「いや、って…そうすると、強制捜査ということになりますが…」白「そうですね、捜査令状を持って、そちら様の方で私のところまでご足労ください」不「捜査に非協力的ということになると、罪に問われる可能性がありますが…」白「警察官の身分を詐称すると、100%罪に問われますよ」不「は?何を言っているのですか?」白「事実に反して警察官であると名乗ると、それだけで犯罪ですよ」不「わたしは警察官です!…」ここで多分別の誰かの手で通話が切断された。彼女はまだ「警視庁捜査二課の中村里実」を演じ続けたかったのかもしれない。言葉の端々に、たどたどしさの残る若い女性(想像でしかない)が、必死に喋る様子に、少なからず同情さえ覚えていた。自分の娘と同年代かもしれない。ちょっと切ない。