ボブ・ディランの多くの曲はAB形式なんですが、この曲の場合は、ヴァース=Aパートではハッティ・キャロル事件とその後の裁判の進捗を叙事的、時系列的に追いかけていきます。かたや、コーラス=Bパートは、曲の主人公でもあるディランから観客に向けた呼びかけになっています。具体的には「今は涙を流している場合ではない」と、聞き手の気持ちを鼓舞するかのように何度も繰り返し歌われます。ただ、最後のパートだけはこれとは違う言葉が歌われます。砂を噛むようなあらゆるニュアンスを含んだ言葉が、我々、聞き手に向けて投げかけられます。