三池崇史監督の『着信アリ』。最後のシーン。完全に個人的で主観的な私だけの理想郷のごとし、完結された芸術ととらえている。ナイフを後ろ手にきらめかせて持つ由美、ベッドに横たわった弘がアメダマをなめる所作、完全に、到底ことばでは表せないくらいの心を揺さぶるあまりにやさしい真理。その後弘は由美に殺されたという説があるが僕はまったくそうは思わない。別にそんな陳腐な芸術性のかけらもない推理などどうだっていいのだけれど、対比として用するにはとても都合がいいので取り上げる。あのシーンはただまさにあのシーンで美しくどこまでも優しくさわやかな朝のようなやさしい死がつつみこむ。すぐれた作品は死ぬことも終わることもその恐怖をはるか彼方へ放り去り消しさる。あのシーンはただただ美しい、愛と優しさにあふれたシーンであるだけだ。由美の最後のあの笑顔はあまりにやさしく心を衝き動かす