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ジョドー

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手塚治虫がモーツァルトなら、宮崎駿はベートーヴェンみたいなものです。
先日、図書館で借りた「プロフェッショナル-仕事の流儀-宮崎駿編」のDVDを視聴した。彼が「崖の上のポニョ」を発案し、制作するまでの過程を通算300日にわたって撮影したドキュメントである。当時67、8歳だった宮崎氏は体力の限界を日に日に感じており、事実上上記の作品を最後の長編作品と位置付けていた。

「崖の上のポニョ」の着想を得てから完成させるまでの試行錯誤が見ていて息が詰まりそうになり、一つの物語を生み出すまでの苦悩が感じ取れた。元々手塚治虫の漫画に影響を受けて一時は漫画家を目指した宮崎が、アニメーターとなりアニメ映画監督になるまでの紹介もされていた。

思い出した。手塚が1989(平成元)年に亡くなった時、各界さまざまな著名人があまりに早過ぎた最期を悼んだ。その中でただ一人、故人に喧嘩を売るかのようなコメントをした人がいた。それが宮崎であった。うろ覚えだが、次のようなものだった。

-僕と手塚さんとでは、アニメに対する物の見方が違い過ぎる。僕は今後、それを自分の人生で証明することで彼への餞(はなむけ)としたい。

この頃宮崎が立ち上げたスタジオジブリは、ようやく商業的に軌道に乗ってきていた。かつて東映のアニメーターとして実績を挙げてきた彼から見れば、手塚のアニメは漫画家の余技くらいにしか見えていなかったのかもしれない。この漫画の神様に畏敬の念は抱きつつも、アニメにおいては一歩も譲れないという思いが一見不遜に聞こえるコメントを寄せる動機になったのだろう。

このさまに、私はモーツァルトとベートーヴェンの微妙な関係を見る思いがした。手塚に影響を受けた宮崎が、結果的に漫画では彼を超えられないと思いアニメに転身したように、ベートーヴェンは師匠のハイドンや先輩モーツァルトが開発し尽くしていない交響曲に自分の今後を賭けた。宮崎も自分の残りの人生を、アニメ制作に投じたのである。

宮崎が己の生涯を賭けたアニメで一時代を築いていることは、現在周知の事実である。果てしなく遠い道のりだったかもしれない。それでも彼は歩み続けた。そこに私は、ベートーヴェンのような孤高な闘いを垣間見るのだ。
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