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【整体スパゲッティ】

これは、1年前、両親とスパゲッティ屋に行ったお話だ。

父は、仕事柄、体の張りを訴えており、整体によく通っていた。利用していたのは、市役所通りにある整体屋。
1人で男の人がやっている。あまりお客さんはいないので、お得意さんになっている。
ある日、父が「整体屋さんが隣りでスパゲッティ屋を始めたらしいんだけど、行ってみないか?」と言い出した。

僕と父と母は3人で整体屋さんがやっているスパゲッティ屋に行くことになった。

「いらっしゃいませ〜!」
元気が良い。流石、整体屋さん、体育会系だ。
「ちょっと着替えて来るんで、お待ち下さい!」
整体屋さんの格好から、シェフのような格好に着替える。業種が変わる瞬間を目の当たりにした。
「どうぞ〜」
中に入る。広い。テーブルが4席の割に広い。
「本日はありがとうございます。まだOPENしていないので、はじめてのお客様です。こちら、メニューになります。こちらお水です。」
OPENしていない店に入る。なんという優越感。
メニューは3種類。
僕は、1600円と高かったがロブスターのトマトソーススパゲッティを注文した。

「ごゆっくりどうぞ!」
どんな料理がくるか楽しみだ。

「久しぶりに3人で外食ね。」母が言う。
確かに、3人で外食なんていつ以来だろう。

突然、母がうずくまる。

「水が、、まずい」
飲んでみる。苦い。水道水だろうか。
アフリカの子どもたちがよぎる。こんな豊かな国で暮らしているのだ。文句は言えない。

「こちら、ロブスターのトマトソーススパゲッティです!」
ちょっとでかい海老だ。すごい殻で覆われている。自分で解体するやつだ。フォークで突きさしてみる。びくともしない。

母は囁く。「その海老、異臭がするからやめときなさい。」犬より鼻が効く。助けられた。

「すみません、はじめてなもんで。ドリンクとアイスもありますが、いかがでしょうか?」

「大丈夫ですよ。」優しい父が微笑む。大丈夫なのだろうか。
興味半分でイチゴのスムージーを頼んでみた。

「ちょっとお待ちを!」
消えた。整体屋さんは店を出て行った。

隣りの八百屋さんにイチゴを買いに行ったのだ。すごい、LIVE感。何の時間だこれ。待つ。
僕達は笑った。

スムージーは美味しかった。

今はもう整体屋もスパゲッティ屋もない。

皆がんばってる。
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