朝井リョウさん「正欲」。すごい本だった。キャッチコピーの「読む前の自分には戻れない」に惹きつけられ読んだ。正直、自分が持っている根本的な欲求は大まかには世間一般と共通している部分が多いと思うけど、もちろん違う部分もあるだろうし、欲なんて状況によって生まれたり消えたりもするのでいつ誰がどういう立場に立つかももっと曖昧だ。ただ大まかに一般的だからこそ、今まで何気ない一言や咄嗟の反応などで誰かを傷つけたこともいっぱいあったのだろうと読んで感じた。想像しがたい欲求を持つ人はこの世にたくさんいる。多様性の時代と言いながら、想像を超えた欲を持つ人を気味悪がったりしてしまう。どんな欲求でも、満たそうとする行為で誰かを傷つけたり損害を与えれば罪となりうる。でもどんな感情も欲求も持つこと自体は誰に制限される権利もない。周りから理解されず自分で見て見ぬふりもできない根本的な欲求を抱えながら、普通の人間として擬態して生きることの生きづらさ。見方を変えれば誰だって何かの少数派であり異常者であるかもしれない。欲に正しいも間違いもない。安易に排除したり否定したりマウントをとったり正義ぶったりしがちだけど、そうでない関わり方を考えるヒントになったのかなと思う。