共感で繋がるSNS
人気
𝕒𝕞𝕒𝕒𝕞𝕒𝕞𝕪

𝕒𝕞𝕒𝕒𝕞𝕒𝕞𝕪

【たぬきかぞくのおはなし】

とあるお山に、3匹のたぬきが暮らしていました。
お父さんたぬきは、頭に葉っぱを乗せてくるんと一回転すると、スーツを着たサラリーマンに変身です。
お父さんたぬきは人間が好きなので、人間の世界で働いているのです。
お母さんたぬきと子だぬきはお山のお家で木の実を集めたり、小川で遊んだりして毎日楽しく過ごしています。
そんなお母さんたぬきには好きなことがあります。
それは「温泉に入ること」。お山に湧き出る温泉を見つけると、ちゃぽんと入ってくつろぐのです。

ある日、お父さんたぬきのお仕事がお休みの時に、子だぬきを預けてお母さんたぬきは街に行くことにしました。人間が入る、綺麗な温泉に入ってみたかったからです。
頭を葉っぱに乗せてくるん、人間のお母さんの姿に変わりました。お父さんから人間のお金をもらってやってきたのは【スーパー銭湯】でした。
お母さんはチケットを買って中に入るとびっくり!
赤い色のおふろや、白く濁ったおふろ、ブクブクと噴き出す泡が止まらないおふろなど、見たことのないおふろがたくさんあったのです。
お母さんは軽く体を洗うと、恐る恐る赤い色のお湯に足をつっこみました。
するとどうでしょう。甘いお花の香りがふんわり香ってきて、とても心地がいいのです。
「お山の温泉にはこんな素敵なおふろはないわ」とお母さんたぬきはにっこり幸せそうです。
隣のお風呂は白く濁っていて、これまた入ってみたくなりました。
ゆっくりと浸かってみると、細かい泡の粒が体にくっつきます。看板を見てみると『微細な泡で、美肌に効果があります』と書いてあります。
「あらあら、すべすべだわ。ふふ、これもいいわね」
お母さんたぬきは気に入ったようで、しばらく美肌の湯に浸かっていました。

「みんな外に出て行くわね?何かあるのかしら」
ほかほかすべすべになったお母さんたぬきは、美肌の湯から上がると、みんなについて外に出てみました。
「うぅ、さむい!」
冬の露天風呂は寒さとほかほかの両立ができる不思議な場所です。
お母さんたぬきはは、慌てて温泉に浸かりました。
「ほぁ〜極楽極楽。これはいつも入っているお山の温泉に似ているわね」
そう、このお湯は、お山から引いてきた天然温泉なのです。
慣れ親しんだ温泉に入ったお母さんはじんわりほかほかゆっくり浸かっていました。

つづく
GRAVITY
GRAVITY1
𝕒𝕞𝕒𝕒𝕞𝕒𝕞𝕪

𝕒𝕞𝕒𝕒𝕞𝕒𝕞𝕪

【たぬきかぞくのおはなし②】

ゆっくり浸かってのぼせそうになったお母さんたぬきは、温泉から出ることにしました。
だけれど、心残りがあります。
壺の形をしたおふろや、電気風呂と書いてあるおふろ、サウナという出てくる人がみな汗だくになっているお部屋も気になっていたからです。
「どれも楽しそうだわ。うちの子が上手に人間に化けられるようになったら、一緒に来ようかしら」
たぬきのお母さんは子だぬきを思いました。
「ふふっ、楽しみだわ」

お風呂から上がると、売店があるのを見つけました。そこには大きなソフトクリームの飾りがピカピカ光っています。
実はお母さんたぬき、こっそり1人で街にソフトクリームを買いにくるくらいの大好物です。
「ソフトクリームの大きいのをひとつ、それから、たこ焼きとポテトをお願いします!」
あれあれ?お母さん食べすぎではないでしょうか?お腹空いていたのかな?

食べ物を受け取ると、大きなソフトクリームにかぶりつきました。
温泉で火照った体に染み渡ります。
「贅沢しちゃったわね」
ソフトクリームをペロリと平らげると、パックのたこ焼きとポテトを持ってきていた風呂敷に包みました。

お母さんたぬきは大満足で【スーパー銭湯】を後にしました。

お山に帰ると、子だぬきが駆け寄ってきました。
「おかえり、お母さん!なんかいい匂いする!毛並みもツヤツヤだ!」
「あなたももう少し大きくなったら一緒に行きましょうね」
興味津々の子だぬきに、お母さんたぬきは柔らかく微笑みました。
「そうだ、みんなにお土産があるのよ」
風呂敷からたこ焼きとポテトが出てきました。
子だぬきにとっては初めて見る食べ物です。
「お父さん、これ好きなんだよ。だから君もきっと好きになるさ」
お父さんたぬきに勧められて、恐る恐るまんまるのたこ焼きを齧りました。少し冷めてしまっていたけど、外がカリカリ中がトロトロで、子だぬきはびっくりです。
「なにこれ!不思議!でもすごく美味しい!こっちも食べていい?カリカリのおいもだ!美味しい!」
子だぬきは大満足です。

「人間への化け方、特訓してあげてね」
「俺たちの子だ、すぐできるようになるさ」
「ふふっ、そうね」

今日もたぬきのかぞくは仲良しです。

おわり
GRAVITY
GRAVITY
関連検索ワード
おすすめのクリエーター