#GRAVITY百物語 「その人をその人足らしめるもの」②二学期の、ある日のことでした。教室に入った私は、強い違和感を感じました。なんだろう、いつもと違う…一体何が?ゆっくりと周りを確認していきます。みんな、いつもと変わらないように見えました。(気のせいかな…。)そのまま席に座り、2時間目の休み時間、体操着に着替える時に、ようやくその違和感の正体に気付きました。(あれ……?そこにいるのは、誰?)見たこともない女の子がいました。その子が、Aちゃんの体操着を着ています。髪型や、体操着袋などの持ち物、席は、Aちゃんと一緒です。でも……顔はよくわかりませんが、それは、Aちゃんではありませんでした。とてつもない違和感に、軽く目眩がしました。Aちゃんが単に風邪を引いているとか、そんなことではない、強い違和感。思わずまじまじと、その得体の知れない誰かを眺めました。その誰かが、発する声までもが、Aちゃんと一緒でした。(だとしたら…私はなんで、あれがAちゃんじゃない、なんて思うの?)頭に浮かんだ疑問に、自分が自分で恐ろしくなりました。その人をその人と認識する基準が、自分でもわかりません。その事実に深く恐怖しました。それからは、Aちゃんを避けて過ごしました。私にとって得体の知れないそれが、やはり恐ろしかったのです。その学年の終わりに、私はまた引っ越すことになりました。最終日、クラスメイトからお別れのメッセージが書かれた色紙をもらい、帰宅してから何気なく、その色紙に目を通しました。他愛のない、無難な言葉が書かれたメッセージの中に、それはあったのです。「今までありがとう。こわかったよね、驚かせてごめんね。」名前が書かれていないそのメッセージは、紛れもなく、Aちゃんの字でした。これは私の実話です。#怖い話 #不思議な体験 #不思議な話 #需要あるのかなぁと思いながら投下2